「なあ、ちょっと聞いてくれ」
「なによ、どうしたのよ?」
私の隣で歩く彼が、空を見上げながら口を開く。
「入道雲って、美味そうだよな」
「は?食べ物じゃないことくらいその脳みそで分かってるでしょ」
「いやいや、俺は夢を見る男なんだ。俺は今世で絶対入道雲を食べる。」
絶対に食ってやる、みたいな目で彼は語る。
「そう、勝手に頑張れば」
「入道雲をつかめたら、まずはお前に一口差し上げる」
「なにその口調、てかいらないわよ、まずアンタが食べれば?毒味ってやつで」
「優しくないな、でも意外と甘いかもしれないぞ」
「そもそもつかめないけどね」
「でもなんか…アンタならできそうな気がするわ。」
私は優しく微笑んだ。
_2023.6.30「入道雲」
そういえば明日から7月ですね。入道雲が7月を運んで来るような気がします。
懐かしい歌を聴いた
まるであの頃の青春を想い出させてくれる…
今日は夏場にしては珍しく涼しい風が吹く。
この田舎で、空一面に広がる青空が、何処かの家の風鈴の音とマッチする。
向日葵の黄色が鮮やかに、太陽に照らされている。
「大人にっても、きっとさ、私たちまたここで会えるよ。」
「だって、宝物は色褪せないでしょ。友達も宝物だよ。色褪せないよ。」
「会える。会えるよ。絶対会える。」
「5年後でも10年後でも30年後でもさ、なんでもいいから、ここでまた会おうよ。」
高校生、最後の夏。私の親友は、親友の親の都合で転校して行ってしまった。最後に会った時、私に言ってくれた言葉がまだ、忘れられない。
私はまだ、人の素晴らしさを諦めていない。
「……いた…本当にいた…、あ、ああ…」
「会えた…会えたよ…!嬉しい、久し振りだね、…っう、やばい、泣きそう」
今日を待ち侘びた。なんて良い日だ。
これは映画じゃない。主役なんていない。
ただ、私たちの絆とおもいが、ここに出会わせてくれた、だけ。
次は、君たちの番だ。
君たちの青だ。
君たちの、"夏"だ。
_2023.6.28「夏」
題材にさせていただいた楽曲紹介----
「青と夏」/Mrs.GREEN APPLE
URL↓
https://youtu.be/m34DPnRUfMU
なんか「夏」と聞いたらこれが降りてきたんです……
「ちょっっっっっと待って!?」
「なん、どしたん」
「いやあの、言わせてもらいますけどね!?
ここ、どこですかー!?!?!?」
「うわやかまし」
「いやだって、そりゃそうなるじゃないですか!?なんで部屋でバリボリポテチ食ってた人間が、急に『図書館』で本読み始めるって!!こんな体験(?)他にないですよ!!」
「おぉ、最後の一文、なんやCMみたいやったな」
「んなことどうでもいいんですよ!!」
「ちゅうかここ図書館、声落とせ」
「てか、あんた誰ですか!?」
「おれ?オマエの担任やけど」
「………っっっえ!?!?」
「っえ!?!?」
な、なんだ夢かよ…。てか担任やなかったし。何だこの夢。
「おかあさんおはよー」
「おー、おはよーさん」
……担……任………?
「っっ!?」
嘘だろここまでが夢かよ!!!!!
夢オチなんてサイテー!!
_2023.6.27「ここではないどこか」
君が目の前から消えた日、その瞬間を僕ははっきりと覚えていない。
確か、交通事故で、君が血塗れになってて…そこからの意識がないな。…大切な人の最期をはっきり覚えていなかったのは、心残りだな。
あなたは交通事故で亡くなった。
信号無視で、歩いていたあなたに突っ込んだトラック。わたしはあなたの血を被った。
ねえ、かみさま。
なぜ、わたしの目の前から彼を奪ったの?
かみさま、かみさま。一生の御願事を聞いて下さりますか。
彼を、わたしのもとへ御返し下さい。どうか。どうか…。
……早く返しなさいよ、返せ、かえせ、
…かえせ、この、泥棒!!
_2023.6.26「 君と最後に会った日」
私は繊細だと思います。自分ながらですけれどね。なぜかと言うと、これは憶測でしかないんですが…。
友人のちょっとした一言で傷ついたり、なんで自分はできないんだ、どうしてこんなにも、という思考に陥りやすいからです。
実際、私のことを高校時代の友人は「繊細だね」と言います。そんな私を「付き合いにくい人だ」と離れていく人の方が多かった。
友人だって、段々と私との付き合いも無くなっていき、最終的に他の仲の良い友人と遊んでいました。
でも、こんな私でも、諦めずに話しかけてくれた人がいた。
あなたは私なんかとは違って、明るく向日葵のような性格で、運動ができるスポーツマン。
私の方はというと、大人しめで蜜蜂に蜜を吸いに来てくれないといけないような性格で、運動は大の苦手。
「おれと、付き合ってくれない?」
最初その言葉を聞いた時、戸惑ってしまいました。確かに何度かお出掛けにご一緒させてもらうことはあったけれど、なんで私に?もっと他にいい人が、と、そう思いました。
「君じゃなきゃダメなんだ、君がいいんだ」
そう言ってくれたあなたの目は、本物で。
自分が「人と関わる」ということを、ちゃんとできた、はじめての人でしたので、その告白に、「こちらこそ」とお返事をさせていただきました。
「…ありがとね。」
「え?なにが?」
「ううん、なんでもない。」
繊細な花に、一人の人が見惚れた。
_2023.6.25「繊細な花」