「なあ、ちょっと聞いてくれ」
「なによ、どうしたのよ?」
私の隣で歩く彼が、空を見上げながら口を開く。
「入道雲って、美味そうだよな」
「は?食べ物じゃないことくらいその脳みそで分かってるでしょ」
「いやいや、俺は夢を見る男なんだ。俺は今世で絶対入道雲を食べる。」
絶対に食ってやる、みたいな目で彼は語る。
「そう、勝手に頑張れば」
「入道雲をつかめたら、まずはお前に一口差し上げる」
「なにその口調、てかいらないわよ、まずアンタが食べれば?毒味ってやつで」
「優しくないな、でも意外と甘いかもしれないぞ」
「そもそもつかめないけどね」
「でもなんか…アンタならできそうな気がするわ。」
私は優しく微笑んだ。
_2023.6.30「入道雲」
そういえば明日から7月ですね。入道雲が7月を運んで来るような気がします。
6/29/2023, 1:11:55 PM