「わたし、日差しはなんだか苦手だなあ」
「どうして?」
「あなたみたいに、眩しすぎるわ」
「僕なんかより、君の方が眩しいさ」
「あなたはわたしを救ってくれた命の恩人よ。何をそんなに自分の価値を低く見るの?」
「君には僕が神様だと見えていても、周りの人には僕が変人と見えるだろう?」
「そんなの関係ないわよ。どっちにしろ、あなたはわたしの太陽よ」
「ときどき、眩しすぎて目を背けてしまうこともあるけれど。それでも、あなたの心が暖かいことは分かってるわ。わたしに、十分すぎるほどの愛をくれたわよね。
わたしは、そんなあなたが大好きよ。」
「…ありがとう。でも、いつか別れが来るかもしれないことは、分かっていてくれよ?」
「僕は人殺しだからさ。」
「……ここに、現場から検出された人殺しの男の情報だと思われるものが。」
「なるほど。…こんなこと言っちゃ皮肉だが、この女、かわいそうだな」
「ですね。そして、この男は逮捕されるひと月半前、女に『君へのさいごの愛だ』と言って、キンセンカの花を手渡したそうです。
反対に女は男が逮捕される前、ヒヤシンスの花を手渡した、とされています。」
「キンセンカ…花言葉は確か……
『別れの悲しみ』だったか?」
「ヒヤシンスの花言葉は、『あなたとなら幸せ』です。」
_2023.7.2「日差し」
7/2/2023, 10:36:47 AM