汚水 藻野

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「あ、猫だ」
俺の友人冬水が言う。窓の奥を見ていたので、俺もそちらに視線を移してみた。

「ほんとだ。なんか俺みてえじゃね?」
「そうだね。袈裟田みたいに白くて青い眼をしてるし」

袈裟田、とは俺のことだ。俺は生まれながらのアルビノ?(実は俺はあまりよく分かっていない)で、白い髪に青い眼を持って生まれてきた。

最初こそ周りの人間と違うところがある、と自分で思い自分で傷ついた。だから俺には冬水くらいしか友達と言える人間がいなかった。

「あ、黒猫来た」
「黒猫はお前か。なんか俺ら二人みたいだな」
そうだね、と笑う冬水。窓の向こうの猫は、黒猫が白猫を追いかけていた。
「でもさ、白猫は黒猫を避けてないか?」
「え?…あ〜…ほんとだ」
「…無理してないよね?袈裟田のことは親友だと思ってるし、袈裟田が自分で思うほど傷つかなくても大丈夫」


「君は僕のたった一人の親友だ。」

「もっと人に頼れ、一人で荷物を抱え込まずに僕にもちょっとくらいは分けてくれ」

「……前から、お前と少し壁作ってた自覚はあった。

冬水。じゃあ、これ持っててくれるか?」

「もちろんさ。」

君は僕のたった一人の親友だよ。

_2023.7.1「窓越しに見えるのは」


もう一個思いつきました。どうぞ見ていってください。


「ねえ、君は窓越しに何が見える?」
そう問いかけても、君はただ窓の向こうを明るく振舞って笑いながら見ているだけ。

彼女は数日前、結構大きな病気を患った。病院に入院したため、最近の僕は、大学の授業が終わったら、真っ先に君に会いに行くことが習慣になっている。

彼女には僕の声が届かない。

耳が聴こえないのだ。
そんな君に、僕はあるサプライズを考えた。

当日。彼女は驚きの表情を浮かべた。彼女が見ていた、その窓の向こうには_


「あ」「い」「し」「て」「る」

と書かれた紙を、彼らが持っていた。
病院の近くにある公園でいつもサッカーをしていた子供。ベンチに座っていた老夫婦。それを見守っていた看護師さん。

僕の声にこの言葉を乗せて君に伝えられなかったのは残念だったけど、

僕と君には、これで十分だった。

_2023.7.1「窓越しに見えるのは」

7/1/2023, 12:28:29 PM