《輝く一等星》
(刀剣乱舞/大和守安定)
冬の寒さが厳しい夜。
ふと夜空を見上げると、輝く星々がよく見えた。
「あ、冬の大三角」
一際輝く三つの星が見える。
あれを冬の大三角と呼ぶのだと審神者に教えてもらってから、冬になると夜空を見上げることが増えた。
こんなに眩しく光るあの星々は何光年という遠い場所にある。
「沖田くんも、あんな遠いところにいるのかなぁ....」
もしいるのなら、どうか僕らを見守っていて欲しい
《共に踊りましょう》
(刀剣乱舞/加州清光)
「今の世界が幸せとか不幸とか分かんないけど、例え地獄のような日々だったとしても、俺はその地獄の業火の上で踊ってやるんだよ」
加州はそう言うといたずらっ子のような笑みを浮かべる。
例えこの戦いに終わりなくても、心が折れるくらいなら
いっそ笑い飛ばして地獄の中で踊ってやるのだと。
「あるじは一緒に踊ってくれる?」
血のような赤い瞳に微笑まれ、審神者は何と答えたか。
貴方なら、なんと答えましたか?
《いつかまた巡り会えるならば》
(刀剣乱舞/小夜左文字)
「やめろ!!」
あの日、自分の本体を見知らぬ盗賊に奪われ、斬り殺された女性と残った幼子。
手を伸ばしても掴むことが出来ず、この汚れた手に掴まれて持ち去られた自分自身。
その瞬間から、小夜左文字の心はどす黒い復讐の心に染まった。
けれども付喪神の力では、男を殺すことも出来ない。
「あの子に会いたい....」
あの時残された幼子を探しに出る事も出来ない。
心は荒むばかりで、真っ暗闇の中を歩いているような日々だった。
ただ。願うならば。叶うならば。
どうかまたあの子に会って、「ただいま」を言いたい。
「神か仏が見ているなら、どうかあの子とまた巡り会えるようにしてよ....」
これは【小夜左文字】が生まれる前の、名も無き左文字の短刀だった頃の記憶の話。
《再会の奇跡》
(刀剣乱舞/宗三左文字)
宗三が本丸に顕現した時、刀剣男士はまだ数える程しかいなかった。
しかし、その中には、もう二度と会えぬはずの刀剣が居たのだ。
「薬研通し...!?」
「おっ。宗三左文字か?俺っちのこと覚えてたんだな!」
かつて同じ主、織田信長の元に居た短刀・薬研藤四郎。
本能寺の変で焼失したはずの刀。
「どうして薬研がいるのですか....」
「まぁ、細かい事は分からないが、薬研藤四郎って刀が在った事とか逸話だとか写しとかで顕現出来たらしい」
ほら、と見せた本体はあの日の薬研藤四郎そのもの。
美しい刃文も変わっていない。
宗三は薬研が、《あの時共に居た薬研藤四郎》だと実感すると、不思議と安心した。
「貴方とまた会えて嬉しいですよ、薬研」
「奇跡ってとこだな。これからまた宜しく頼むぜ」
その笑顔も、あの人変わらぬ子供のような笑顔で。
もう二度と見れないと思っていた仲間と会えるならば、
現世では会えなくなった自分の兄弟達にも会えるのだろうか。
もし会えるなら、それも奇跡と呼びたい。
宗三はそう思いながら、ここでの生活を始めた。
《誰そ彼。逢魔が時》
(刀剣乱舞/江雪左文字)
昼から夜に移り変わる頃。
所謂《黄昏時》という時間は、1人で出るのは危ないと誰かが言っていた。
逢魔が時。誰そ彼。
相手の顔がよく見えない時間だからこそ、良くない物と遭うかもしれない。
そんな事を言っていたのは誰だったか。
本丸の《彼岸花》の景趣の向こうに誰かの姿が見えたのは、この時間帯だったからなのか。
近侍の江雪は直ぐに気づいたが、審神者には見えていないようだった。
(彼岸が、此岸に繋がってしまったのでしょうか...)
そんなことを考えながら、審神者の見えぬところで静かに手を合わせ、あの者が本丸内に来ないことを祈っていた。