《この瞬間を永遠に》
(刀剣乱舞/大包平)
誰しもが「この時間が永遠に続けばいいのに」と思う事があるだろう。
この大包平も同じだった。
彼にとっての時を止めたくなる程の事は、近侍である時だという。
その本丸では近侍を1日交代で務めており、大所帯となればなるほど、近侍が巡ってくるまでに時間がかかる。
だからこそ、近侍として審神者の傍に居られる時間は、大包平にとってかけがえのない時間なのだ。
「次に俺が近侍になる時も、存分に頼ってもらっていいぞ」
《夜景を見たがる理由と見せるもの》
(刀剣乱舞/包丁藤四郎)
「夜景が綺麗なとこ知らな〜い!?」
包丁藤四郎が審神者(男)の元に来て一言目がそれだった。
審神者は仕事の手を止め、「何を突然言うのかな、包丁?」と聞き返す。
「夜景が見たいんだよー!花火もいいけどさー?」
「なんのために?」
「そりゃ....人妻に綺麗な夜景を見せて、好きになってもらいたいからじゃん!」
あぁやっぱり、と苦笑いを浮かべる審神者。
とはいえこの審神者は恋人なんておらず、ましてやこんな環境下で出会いなどあるわけもない。
つまりは"夜景がきれいなとこ"なんて知らないのだ。
とは言え、願いを無下にする訳にもいかないという気持ちもある。
考えた末に審神者は景趣を変えることで手を打った。
《九周年 祝い花火》にすれば、現代の夜の景色。
つまりは夜景と花火が見れるから、という考えだ。
勿論、彼がそれで納得するかは分からないので
駄目だったらお菓子で機嫌を取ろうと思っているのは内緒である。
《花の下で眠る願い》
(刀剣乱舞/五虎退)
その本丸の審神者は、季節によって景趣を変え、四季を楽しむことが好きな人間だった。
春は桜。夏は向日葵。秋は彼岸花。冬は椿。
他の花々も好きで、二十四節気に合わせて変える人だった。
だからなのか、ある日審神者は唐突にこう言った。
「死んだら、花の下に埋めて欲しい」
五虎退は反応に困り、「あるじさま....」と心配をする。
審神者は直ぐに笑い、「いつか来る日の話だよ」と言った。
人はいつか死ぬ。刀剣男士とていつか壊れて消える日が来るかもしれない。
それを受け入れ、前向きに生きるのは簡単なことでは無いことくらい、五虎退とて分かっている。
ならば、その終わりや、終わったあとの事を願うのは人も刀も同じだろうと。
「あるじさまはなんのお花の下に眠りたいんですか?」
審神者は五虎退の問いに「そうだねー....」と悩み、
「桜かな。大きな桜の木の下で眠って、春にはその桜の下で皆に花見をして、一緒に楽しみたいかな」
と笑って答えた。
五虎退は「絶対叶えます!」と笑って返した。
《感情とリンクする空》
(刀剣乱舞/乱藤四郎)
その日、乱藤四郎はとにかくツイていなかった。
馬当番では馬に髪を食べられ、昼餉は苦手な物が出て、
気分転換に万屋に足を運んだが、欲しかった品が売り切れ、挙句帰り道は雨が降っていた。
「今日は上手くいかないなぁ〜.....」
嘆く乱の気持ちは、まさしく今の天気と同じく泣きそうだった。
「空も泣いてるのかなぁ.....」
乱は、燻る気持ちを吐露しながら雨が止むのを待つことにしていた。
暫くすると万屋街を繋ぐゲートに見慣れた人影が現れた。
「いち兄!?」
「乱が1人で万屋に行ったと聞いてね。傘も持たなかっただろうから迎えに来たよ」
それは粟田口兄弟の長兄・一期一振だった。
乱は大好きな兄の姿を見ると、先程までの心の曇りがすぐに無くなった。
「いち兄を独り占め〜!」
「こらこら。ちゃんと傘を差さないと濡れてしまうよ」
「はーい♪」
空は涙を流すように雨が降っている。
けれども涙と同じなら、いつか笑うように晴れるために流す涙と思えば、雨も悪くは無いと思えた。
《待つ時間も楽しく思える》
(刀剣乱舞/博多藤四郎)
博多藤四郎は商人魂を持った短刀で、本丸内でも現代的なものに最も興味を持つ短刀だった。
現代遠征へ向かう際に渡されたスマホも早くに使いこなしていた。
手紙よりも声よりも早く届く電子ツールは、博多にとっては何よりも惹かれるものだった。
LINEも勿論使いこなしており、審神者や仲間たちとのメッセージのやり取りもそつなつこなしていた。
だからこそ、返事が来るのが待ち遠しく、もどかしく、楽しく思えるのだ。
「返事が来たァ!嬉しかー!」