近所の空き地で、みんな集まって、遊んだ。
鬼ごっこ、かくれんぼ、
野花で、作った首飾り
ママごと遊びの泥ステーキ‥。
なにもなかったけど、楽しかった。
あの頃に、戻りたいなぁ。
社会人になって、初めて失恋した。
仕事、終わりに、思い切って、思いを伝えた。
「他に好きな人がいるから」とのこと。
簡単に言われた。
悲しさと虚さでいっぱいになって、どうしてよいか分からなかった。
とにかく、なにかから、逃げたくなって、車を走らせた。
普段は何気なく通っていた商店街に、アンティークな街頭。人は誰も通っていない。
まるで、童話やジブリの世界に来てしまったかのよう。
寂しさを幻想的な気分で紛らそうと、数時間、無闇に車を走らせる。
真夜中を過ぎた3時頃、どこか分からない4車線の道路を走る。
対向車はあっただろうか?
大きな工場の煙が、照明に照らされながら、不気味に誘っている。
「もう、帰ろうか」正気に戻りかかった。
「いや、まだ、早い」と、疲労と焦燥で火照った脳みそが言った。
よく分からない、細い道を無理やり進むと、どこか開けた場所に来た。
目の前には、吸い込まれそうなくらい大きな口が開いていた。
そこで、車を強制的に止めさせられた。
ブォン、ブォン。
最初、ただの耳鳴りと思い、無視していた。
‥がやはり気になって、周りを見渡した。
薄明かりに巨大な大きな扇風機が回っていた。
そして、その時、ようやく、気がついた。
僕は、数年前まで、住んでいた家の近くの海岸にいたのだ。
僕のちょっとした冒険は、そこで終わってしまった。
失望と安堵を胸に溜め、車のエンジンをかけた。
しばらくすると、僕は昔と変わらない街中に紛れていた。
僕の好きな色は、あるテレビ番組の映像の中にある。
昔、金曜ロードショーという映画をテレビ放送する番組があった。
そのオープニングシーンで、沈みかかる夕日を背景に、海とそこに佇む男性を照らし出している場面がある。
そのシーンの色を一言で表すのは難しい。
少し赤みがかかった、少し、錆びれて、でも、ちょっと前まで、青く輝いていたであろう海を照らし、黄金に輝いている。そんな感じであろうか?
そこに、哀愁漂う渋いトランペットの音色が、その光景を際立たせている。
きっと、夕日に照らされながら、海辺に佇んでいる人は初老を迎えた男性で、海色の青春の時期を過ぎて、晩年を迎える前に昔を振り返り、最後の情熱の火を燃やし尽くそうとしている。そんな、象徴のようである。
おばあちゃん、おじいちゃんになろうが、
手足や目や耳が聞こえなくなろうが、
ボケて右も左も分からなくてなろうが、
あなたのそばに居られる僕でありたい。
僕は、サーカスの空中ブランコから落ちる夢を何度かみた。
最初にみたのは、幼いころ、何か母に言われ、僕は激しく怒り、母に水鉄砲を向けた。
その夜であった。
恐怖で、おしっこを漏らしていたのを覚えている。
それから、母の愛を真正面から受けとめられないようになった。
2度目の落下。
小学生のとき。
肺炎と扁桃腺の除去手術で入院した時である。僕はその時、小学生3年生であったが、その時以来、度々、定期的に体調を壊している。コロナにも2度感染した。今のところ、重度化せずに済んでいるが。
3度目の落下。
中学生のとき。
僕は最初部活で、野球部に入ったが、
途中、顧問の先生の勧めで陸上部にかわった。
変わる前は、迂闊にも気付かずなかったが、
陸上部のメンバーは、みんな全くの初対面で、
僕の性格やその時の時流もあって、軽いいじめを受けた。その時やっと、いままで、友達に恵まれていただけであることに気がついた。
人間が急に怖くなり、今まで、仲の良かった友達とも遊ぶことはなくなった。
4度目の落下。
高校生のとき。
僕は、勉強をサボり始めた。
今まで、成績は普通よりいい方であったが、
ただの丸暗記で凌いできたことに薄々気づき始めた。
本当の能力の能力を知りたくなかった。
恐怖心に負け、自分の可能性を信じることができなくなった。
5度目の落下。
社会人になってから。
僕は、今までで女性と付き合ったことがない。
理由としては、人間嫌いであることや本当の自分を知られたくないためという以外にも、1番は人を愛することが分からない。
形だけの婚活を10年ほど続け、ますます、愛について混迷を深めた。
そして、今、僕は落ちた先で溺れている夢をみた。どこかに、光は差していないかともがきながら、周りを一生懸命見渡してみる。
夕日が差しかかった部屋のなかより。