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社会人になって、初めて失恋した。

仕事、終わりに、思い切って、思いを伝えた。
「他に好きな人がいるから」とのこと。
簡単に言われた。
悲しさと虚さでいっぱいになって、どうしてよいか分からなかった。

とにかく、なにかから、逃げたくなって、車を走らせた。

普段は何気なく通っていた商店街に、アンティークな街頭。人は誰も通っていない。
まるで、童話やジブリの世界に来てしまったかのよう。

寂しさを幻想的な気分で紛らそうと、数時間、無闇に車を走らせる。
真夜中を過ぎた3時頃、どこか分からない4車線の道路を走る。
対向車はあっただろうか?

大きな工場の煙が、照明に照らされながら、不気味に誘っている。
「もう、帰ろうか」正気に戻りかかった。
「いや、まだ、早い」と、疲労と焦燥で火照った脳みそが言った。

よく分からない、細い道を無理やり進むと、どこか開けた場所に来た。

目の前には、吸い込まれそうなくらい大きな口が開いていた。
そこで、車を強制的に止めさせられた。

ブォン、ブォン。
最初、ただの耳鳴りと思い、無視していた。
‥がやはり気になって、周りを見渡した。

薄明かりに巨大な大きな扇風機が回っていた。
そして、その時、ようやく、気がついた。
僕は、数年前まで、住んでいた家の近くの海岸にいたのだ。

僕のちょっとした冒険は、そこで終わってしまった。

失望と安堵を胸に溜め、車のエンジンをかけた。

しばらくすると、僕は昔と変わらない街中に紛れていた。

6/23/2023, 7:36:57 AM