出会ってから随分時間が経った
僕らは長い間一緒にいたね
来週は君の誕生日
きっと待ちくたびれただろうな
ダイヤモンドではないけど
君の誕生石のアメジストの指輪を
「あなたに届けたい」
この想いが貴方に伝わればどんなに楽なんだろう
抑えても押し込めても、一目見るだけで、声を聞くだけで簡単に溢れてしまう
背が高い訳でもない、筋肉質でもない、特別何かに秀でてる訳じゃない。そんな何でもない貴方に想いを寄せて
もしも貴方が誰かと一緒になったら、なんて考えると怖くてたまらない
今はまだ言える勇気は無いけれど、必ず貴方に伝えたい
「I LOVE」
普段は着けない大人っぽい下着を身につけ
トレンドを押さえつつ自分の好きな服を着て
髪はゆるく巻いて
清潔感のあるメイクをして
普段はコンタクトなのに眼鏡に変えたり
マスクは控えめベージュ
いつもと違う甘めの香水をワンプッシュ
いつもの場所でもお洒落一つでこんなにワクワクする
「街へ」
隣の席の小林君は他人に冷たい。自分の仕事を黙々とこなすけど、気配りはしない。
「小林君、これお願い」
「すいません、今無理っス」
「マージか…あー、じゃあごめん、木下さん。この仕事頼めるかな」
「(まだやる事あるけど…仕方ないか…)分かりました」
「ありがとう」
請け負ったのはいいけど…まだいっぱい仕事あるんだけどな…。ため息混じりに仕事をこなす。
いつもこうだ。小林君が振った仕事が私に回ってくる。
…ちょっと疲れたな。ココア買ってリフレッシュしよ!
「はぁー…甘ぁい。しあわせ。よし、がんばろっ!」
座席に戻るとさっき請け負った仕事の書類がない。あれっ、え、何で?無くならない様にクリアファイルに入れてあったのに…
「木下さん」
「え、あ、はい!って小林君か。どうしたの?」
「さっきの仕事、俺やるんで」
「え、でも…」
「いいんで」
「あ…ありがと、う」
その後一言も話さなかったが、彼なりの優しさを垣間見た
「優しさ」
しんと静まった夜の町
冬空はやけに空気が澄み、今日は星がよく見える。と言っても星座なんてよく分からない。小学校の時に習った気はしたがイマイチ覚えていない。
吐く息は白い。手は寒さで赤みを帯び、見えないが多分鼻頭も赤くなってる。
時刻は午前2時を過ぎていた。ほとんどの人が夢の中に揺蕩っている時刻に僕は現実世界を闊歩する。眠たく無い訳ではない。きっと帰ればすぐにでも寝られるだろう。ただ今日は何となく寝る事が勿体無い気がした。
空を見上げれば星の明るさを際立たせる様な闇。ただの黒ではない、よく観察すれば深い紺色や紫に近い色合いも混じっていて僕はすっかり夜空に吸い込まれた。やけに綺麗で寒さも忘れしばらく空を眺めていた。
「ブウゥン…」
大通りに車が通った音で目を覚ました。時刻は午前2時40分
「さむっ…」
こんなに魅入られるなら星座の一つでも覚えようか。そう思い帰路に着く。
「ミッドナイト」