伊勢海老

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3/30/2025, 7:43:05 AM

涙を意図的に流すと頭がスッキリとして好きだ。
脳の中から言語化できないモヤモヤと満足感を一緒にして頬をつたい落ちる涙。
美しいものではなく、自己中なもの。
海や湖ではなくて、公園の蛇口を出しっぱなしにした時の水に似ている。
きっと、青空が似合う。
春の日の、何かが始まって少し慣れてきたころ。
そういう涙を綺麗な空気の自然の匂いと交換して、誰に邪魔されることもなく流したい。

3/25/2025, 12:36:35 PM

「みんな覚えてることに夢中で、忘れたことを含めて記憶だってことに気がついていないの。それも、すごく個人的な視点で。基本的に自己中なのよね、人って。」

 ︎︎そう言って笑う君に一言。

「その理屈は正しいと思うよ。でも、君。わかってはいないんじゃないか。」

 ︎︎不思議な顔をして首を傾げる君の姿が僕の脳の奥に、言葉と共にこびりつく。
まただ。またひとつ増えた。

3/19/2025, 9:11:40 PM

「どこ?」
聞こえたのは男の人の声?女の人の声?
若い?年老いている?
怒っている?笑っている?
これはあなたの精神状態を表します。

そんな話を大学の哲学の先生が言っていた。
私はこの先生が嫌いで嫌いで仕方がなかった。
この先生はいわゆるジェンダー論や差別、女性論が専門だった。
私が前時代的な思想に凝り固まった人間のなのかは私自身がどう見られているかによるものだからわからないが、私はそういった視野を持つことが必要だろうと考えて、彼の講義をとったことは事実である。
では、この先生の何が嫌いだったのか。
その理由はひとつ。
正義を盾に、学生をいじめることにたけていたからだ。
この質問にもそれが感じとれるだろう?

ある日、1人の学生が吊るしあげられた。
講義では匿名の質問が募られ、次回の講義の最初でそれに対する返答があった。
「こんなことを書くやつがいるから世の中良くならない!」
質問は前回の家庭における役割の授業の内容において、環境によって例外としてこういったものはないかという、的をいた丁寧なものだった。

先生が声を荒らげたとき、私はこう思った。
どこで、どこの道のプロが、世の中をどの道に良くしようというのか。


3/16/2025, 1:36:54 AM

昨日の夜、何かすごく"赤いもの"を見た気がする。
アホになるほど飲んでしまったから、それが現実なのかはたまた酒が作り出した空想なのかわからない。
友人はおらず、1人。以前から興味を惹かれていた海鮮居酒屋のカウンター席で酒を飲んでいたことまでは覚えている。
だが、店を出て何をしたのかが全く記憶にない。
そこで見たはずなのだ。
幸いなことに今日は休みなので、頭痛薬と胃薬を飲んで、真相に迫る探偵ごっこにでも興じてみよう。

家をでると、オレンジの光と少しの寒さが肌を刺激した。
もう少し厚着をしても良かったが、この刺激が二日酔いを覚ますのにちょうど良い塩梅のものだったため、僕は上着を取りに帰りはしなかった。
そして昨日と同じ道を辿る。
店は最寄り駅に新しくできたもので、自宅からは20分程の位置にあった。
歩いている間に、"赤"について思考をめぐらす。
昨日、食べたマグロ、飲んだ赤ワイン。
隣に座っていたカップルの女のカバン。リップ。
そして、血の色。
海の色は青いのに、海鮮居酒屋は赤いものばかりだな。そう感じるとともになぜ酒で記憶をとばしていながらも話もしなかった女のカバンの色を覚えていたのかという疑問がうかんだ。
「もし、その"赤"が本当に事件性のあるものだとしたら、これは案外、芝居ではなく本当に探偵になるのかもしれないぞ。」等と映画の1幕のようにセリフをはく。
この何かに巻き込まれる不安感と高揚感を表現する言葉は...そうだな、海とかけて「心がざわめく」がいい。

そんなことを考えながら歩いていると、その"赤"は唐突に正体を表した。

赤い、赤い、1尾のエビが地面に横たわっていた。

居酒屋付近のコインパーキングの前。
呆気にとられながらも、そのくだらなさに笑ってしまった。
所詮、現実なんてこんなものよ。
だが、ここまでくだらないと、かえって心は晴れる。
そう踵を返し、帰路に着いた。

その時は考えもしなかったのだ。
居酒屋の近くのパーキングにエビがある意味。女のカバンとリップの色を覚えていた理由。
二日後、少し離れた山でカップルの男の遺体が見つかった。死亡時刻はあの晩。パーキングの監視カメラにはエビの写真をとるカップルとそれを見ている僕、そして謎の黒い男の姿が写っていた。
まだ、女は行方不明らしい。

3/14/2025, 3:11:10 PM

0時になって血眼でインターネットを漁る。
あぁノスタルジーを呼ぶ、あの広告のゲームよ。
小学生のピュアな私を汚し、期待感と罪悪感を同時に産んだ、あの名前も覚えていないゲームよ。
君はどこへ行ってしまったのか。
僕は十数年、君のことを考えていたのに、君はこの大海原から消えてしまったのか。
1時を過ぎるとタイピングの手が次第に弱まっていき、思わず泣きそうになる。
さようなら、私の夢。
さようなら、私のノスタルジー。

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