そっと、教室を抜け出して
授業を抜けた馬鹿がいる。
彼は自由か不自由か。
気づかぬ先生は彼にそれを伝えることはおろか、その二択を考えることも出来ない。
同じくそれに気づいた委員長気質の君。
「きっとなんでも良かったのよ、手段なんて。でもあれは最悪。彼の自由は寒さと枯葉と少しの孤独になってしまうのだから」
そっと、そうつぶやく。
僕もそっと言葉を返そうとしたとき、誰かが爆音でイビキをかきはじめた。
雪が降りつもる、レンガのお家の前
赤い服を着たおじいさんとトナカイ
ソリの整備に大忙し
Ring...Ring....
Ring...Ring....
鈴の音の鳴りがどうも悪い
すると、鈴の間から1枚の手紙が落ちてきた
サンタさんへ
この手紙を読んでいるってことは僕の計画は成功したってことだ
後ろを向きなよおバカさん!
ソリは頂いたぞ!!!
僕の欲しいものはこの空を飛ぶことさ!!!
Ring...!Ring...!
Ring...!Ring...!
大きな音で鈴がなる
風が吹いて雪が舞い上がり、ソリが大きく空を飛ぶ
その日、無邪気な笑い声と夢が世界を駆け巡った
これにはおじいさん大笑い
「これぞ子供の自由さよ!物ではなくて経験を欲しがるとは、これは将来有望な子じゃ!大胆に無邪気に空を駆け巡るがいい!」
そんな事をサンタに言われてみたいと考えていると、クリスマスイブにそんな夢を見た。
もう子供ではない、大人の夢。
だけど、鈴の音が鳴ると頭によぎる。
雪の中を駆け巡り、笑いながら飛んだ空のことを。
あぁ自由だ。
君と一緒に
気味を2人で
黄身を入れて
黄味になるまで
混ぜ合わせたい。
あのお皿が割れるまでは一緒にいましょう。
自分の描いたキャンドルの絵にキャンパスを燃やされてしまった少女。
水を描いて火を消そうとしたが、水だけがひとりでに降ってくるリアリティに耐えられなかった。
そこで過去という名前の男が火を消しに来る。
火の消えたキャンドルと男と少女。
さぁ、少女の明日はどうなったのかな。
暗い所は古くから悪魔やら妖怪やらの巣窟として恐れられてきたが、近年は少し違う。人間の中でも暗所を好むものが現れ始めたからだ。かくいう私も暗所は好みである。それは人間ではない化け物どもと友達になってやろうという奇天烈な考えを抱いた訳ではなく、暗所特有のあの感じが好きだからだ。
あの感じ、目がものを捉えているのかいないのかわからないような、例えるなら眼鏡を外した時のような感覚。日中や明るい所では情報の多くが視覚によるものらしい。それが揺らぐ分、脳に空きスペースができて頭がスッキリとする。そこに空気や音が流れこみ、出ていく様子もハッキリと感じられる。暗闇と一体になったあの感じ。
きっと化け物どももこの感じを体験したんだろう。欲望を象徴するなんていわれる悪魔も事件や災害がモチーフの妖怪たちもこの体験して何を感じたのだろう。人は光の中で互いに監視し、理性によって律し合うことを正義や社会なんていう言葉で飾るが、悪であり堕落したものとされている彼らのように闇の中で本能のままに自然を優雅に体験するこそが生命体の本質であり、世界なのではないかと考えてしまう。さっきは友達などごめんだと言ったが実は私は化け物どもと酒でも一杯やりながら、世界を一緒に感じたかったのかもしれない。そうして彼らと同じ闇に溶け込んでいくのである。
もしそんな機会があれば聞いてみたいことがある。
「世界の形はどっちだと思う。」と。