暗い所は古くから悪魔やら妖怪やらの巣窟として恐れられてきたが、近年は少し違う。人間の中でも暗所を好むものが現れ始めたからだ。かくいう私も暗所は好みである。それは人間ではない化け物どもと友達になってやろうという奇天烈な考えを抱いた訳ではなく、暗所特有のあの感じが好きだからだ。
あの感じ、目がものを捉えているのかいないのかわからないような、例えるなら眼鏡を外した時のような感覚。日中や明るい所では情報の多くが視覚によるものらしい。それが揺らぐ分、脳に空きスペースができて頭がスッキリとする。そこに空気や音が流れこみ、出ていく様子もハッキリと感じられる。暗闇と一体になったあの感じ。
きっと化け物どももこの感じを体験したんだろう。欲望を象徴するなんていわれる悪魔も事件や災害がモチーフの妖怪たちもこの体験して何を感じたのだろう。人は光の中で互いに監視し、理性によって律し合うことを正義や社会なんていう言葉で飾るが、悪であり堕落したものとされている彼らのように闇の中で本能のままに自然を優雅に体験するこそが生命体の本質であり、世界なのではないかと考えてしまう。さっきは友達などごめんだと言ったが実は私は化け物どもと酒でも一杯やりながら、世界を一緒に感じたかったのかもしれない。そうして彼らと同じ闇に溶け込んでいくのである。
もしそんな機会があれば聞いてみたいことがある。
「世界の形はどっちだと思う。」と。
10/29/2024, 9:37:06 AM