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7/25/2025, 2:32:07 PM

半袖


半袖のシャツに袖を通すのを躊躇っていた。
その袖の中に、隠さなければいけないことがたくさんあったからだ。

日焼けを知らない肌の白さだとか、自ら傷付けた後悔の痕だとか、折れそうなほど細く骨張った腕だとか、伝えることも許されない君への想いだとか。

そこに隠れていたのは、

誰にも見せられない醜い何か。

7/24/2025, 1:10:13 PM

もしも過去へと行けるなら


もしも過去へと行けるなら、
あの日見逃した流れ星を見たい。
もしも過去へと行けるなら、
食べ損ねた期間限定のアイスを食べたい。

もしも過去へと行けるなら、
君の隣でもう一度やり直したい。


零れ落ちる夜空のような瞳をもう一度見たい。
逃げることはないのに、焦ってアイスを頬張る君の表情を見つめていたい。
君が笑っていた頃に戻りたい。

もしも過去へと行けるなら、
もう二度と、この手を離したりしないのに。

7/21/2025, 3:43:51 PM

星を追いかけて



『流れ星って宇宙の塵らしいよ』

なんて、夜空を覆う流星群のなかで、君はそんな夢の無い言葉を吐いた。

『宇宙からやってきて、地球に落ちて、あの星たちは何処に辿り着くのかな』

きっとみんなが綺麗だと持て囃すあの星たちは空から地に落ちて、踏み潰されて、跡形もなく消えてしまう運命を辿るだろう。

追いかけていったって、希望なんてない。
夢見れるほどの現実なんて、待ってないんだよ。


『…それでも、そうだったとしても、今見てる星空が綺麗だって思う気持ちは嘘じゃない。本当はただの塵だなんてわかってても、何度だって手を伸ばしたいよ』

星なんて、追いかけるだけ無駄だ。
だけど。

君が瞳に映す小さな夜空は、泣きたくなるくらいに煌めいて、とても綺麗だと思った

7/20/2025, 12:36:37 PM

今を生きる


あの日、真っ青な空に君が飛び込んだ後のお話。

君がいなくなった後も普通にお腹は空いて、眠たくなって、明日を迎えた。
君はいなくなったのに、世界は今日も廻り続けている。

屋上から飛び降りて自殺なんて、どこにでもあるありふれたお話。よくあるニュースのひとつ。
そうやって世間からはすぐに忘れられ、君のお話は風化していくだろう。

それでも、そんな救いようのない世界でも

生きてさえいれば何か残せたんじゃないかと思うんだ。
君が隣で、生きてさえいてくれれば。


拝啓、あの空に溶けていなくなった君へ。
君のお話をぼくは忘れない。
ぼくだけは忘れてしまわないように、今を生きていく。


7/20/2025, 3:56:30 AM

飛べ


青天の霹靂。澄み切った青空。
手を翳して透かした空は痛いくらいに眩しかった。

自由な空に飛び立つだけだよ、大丈夫。

きみに会えなくなるのは、少し寂しいけれど。
それは、決して悲しいことじゃない。

飛べ。

飛んで、こんな世界にさよならしよう。
そして、また会えたならもう一度。

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