あんず

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5/1/2024, 11:49:18 AM

カラフル


仕事を終えて会社を出る。
あぁ、今日はダメダメだった。
疲れすぎた。
自分の仕事も忙しかったし
トラブル対応もあった上に
ややこしいクライアントとの商談も重なった。

あかん、ヘロヘロや。。

こんな日はあれに限る。
心を決めた私は閉店間際のデパートへと
早足で向かった。


「…よし。」

「杏さん…これ全部食うの?」

「気が済むまで食べる。」

「もしかしてこれ…」

「お店にあったマカロン全種類!!」

「…コーヒーいれてあげるね笑」

お気に入りのお皿に
色とりどりのマカロンを並べて
にんまり顔の私と隣で苦笑いを浮かべるシロくん。

可愛いものを愛でる。
それを食べることで
心も体も満たされていく、という魂胆だ。


ひと口食べると
まったりと甘い味が口に広がった。

「くぅっ、甘いねぇーー」

「やってる事可愛いのにリアクションオッサンなんだよな、、笑」


…まぁ案の定、2個でギブでしたけど。


「だから俺聞いたでしょ、全部食うのって」


シロくんが、杏さんらしいわって笑いながら
コーヒーをお茶に代えてもってきてくれたのでした。



4/28/2024, 12:45:23 PM




「お前の生き方って刹那的すぎんのよ」

昔、大学時代の先輩と飲みに言った時に言われたことがある。


「どゆこと?せつなてき?」

「刹那っていうのは極めて短い時間、みたいな意味な。ってか知らんのか、意味」

「わざと難しく言うなよな。」

俺がそう文句を言うと
先輩は大事なのはそこじゃないのよと言って
グラスのビールを飲み干した。

「あんまりにも先を考え無さすぎなんだよな。その日が楽しかったらいい、今この瞬間が楽しいのが1番!みたいなのが見てて危なかっかしいんだよな。
そろそろちゃんと将来の事とか考えないと。」

「ジジィみたいなこと言うなよめんどくせぇ。いいんだよ、俺は。多分だけど早死するタイプだからさ。その日この瞬間を楽しいって思えてないとある日突然死んだら後悔するじゃん。」

子供の屁理屈みたいな事を言ってると
思ってはいる。でも本当にそう思っている部分もあった。

人生は短い。親を早くに亡くした俺はとにかく後悔しない生き方をしたかったのだ。
親のようにやり残した事、悔いを残して死ぬなんて絶対に嫌だった。

「まぁお前の人生だからな。俺はこれ以上は言わんけど。自分が人生をかけて大切にしたい人が出来た時に、金とか職とか特技とかさ、とにかくなんでもいいから武器のひとつでも持っておけよ。」

「…おぅ」

「選ばない人生はいいけど、選べない人生にはしないでくれよ。お前には幸せに生きて欲しいんだ」

その為には一緒に生きてくれる人が
お前にはきっと必要だよ、と先輩は言った。


その言葉をそれから数年後に痛感することになるとは
その時の俺は知る由もなかった。


(これはあなたに出会う前の話。)

4/27/2024, 11:11:04 AM

善悪



物事の善し悪しは立場によって違うんだから
だからどちらがいいとか悪いとか
簡単に決めるべきではないわ。

先輩が言ってくれた言葉を
多分私は一生忘れないとおもう。


仕事でヘマをして上司に散々絞られ、
本気で仕事をやめようかと悩んでいた頃。

気持ちが凹んでいてなかなか仕事も進まなくて
コーヒーでも飲もうとして自販機に向かう途中。

給湯室からキャッキャと騒ぐ声が聞こえてきた。
聞くつもりはなくても話は聞こえてくる。

……私のことだ。

今回のヘマ話が1.5倍くらい誇張されて
噂話の花が咲いていた。

あぁ凹む。
勘弁して。。

固まってしまった足を無理やり動かそうと
して歩き出した時。

「気持ちよくない話を大きな声でするのは感心しないわ」

と少しトーンの低い声が聞こえてきた。

杏先輩だった。
いつもの優しい声とは少し違う、
少し冷たい声。

「でも、そのせいで課長が大変な目にあったって…」

反論する女子社員。

「物事の善し悪しは立場によって違うんだから
だからどちらがいいとか悪いとか簡単に決めるべきではないわ。
…ただ、その話をする為に仕事をサボって喋ってるって言うのは善いか悪いかははっきりしてると思わない?」

そう言われ、言い返せなかった女子社員達は
そそくさと部署に戻っていった。

「杏さん。。」

「ん?」

「ありがとうございます。」

「私苦手なのよ、ああいう集まり方。」

そう言って杏先輩は近くの自販機で温かいコーヒーを買って戻ってきた。

「杏さんの、善し悪しは立場によって違うって言葉。すごく救われた気持ちになりました。」

「ふふ、あれね。私もそう言って助けてもらったことがあるの。」

だからいつか機会があったら絶対使うって決めてたのよ。

そう言って先輩は笑った。


※後輩さんのミスは課長が指示ミスしてて
そのせいでミスった、という話でした。

4/25/2024, 11:35:08 AM

流れ星に願いを



もう何年も前に仕事仲間と行ったキャンプで
流れ星を初めて見た。

その日は昼から飲んでてベロベロで
酔い覚ましに歩いていて展望台みたいな所で
誰もいないからと床に大の字に寝っ転がって
空を見ていたら
キラッと流れるものを見つけた。

「こんな一瞬で3回もお願い事唱えるの無理じゃん!」

って言いながらも
星が流れる度に皆が無言になっていたのは
今思い出しても面白い。

あの時私は
何を願っただろう。

思い出せないってことは
願うほどでもないことだったんだろうな。



「杏さん!!今星!流れたよ!!!」

「ほんと!?どこ!!」

「ほら!…あっ!!また!!」

「…わっ!ほんとだ!!!」


それから何年も経った今。
再び見ることが出来た流れ星に
隣にいる大切な人と一緒に願う。

こんな楽しい日々が
一日でも多く過ごせますように。

そのための努力は惜しまないから
どうかお願いします、と。

4/24/2024, 11:43:25 AM

ルール


杏さんと俺の中のルールは基本ふたつ。

決まりをつくると
守った守らないで喧嘩になるから
のっぴきならない事がない限りは
決まりは作らない。
これからどうする、より
どうやって解決するかが大事。

もうひとつはそんな二人の間で決められた
唯一と言って良いほどのルール。

ある日ふと冷蔵庫に入っている
駅前のスイーツ店の限定プリンは
どんな理由があっても食べてはならない。

食べたが最後、
杏さんが般若の顔になって戻ってこなくなる。



もうあんな鬼みたいな顔は
見たくない…。
マジで怖かった。




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