あんず

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善悪



物事の善し悪しは立場によって違うんだから
だからどちらがいいとか悪いとか
簡単に決めるべきではないわ。

先輩が言ってくれた言葉を
多分私は一生忘れないとおもう。


仕事でヘマをして上司に散々絞られ、
本気で仕事をやめようかと悩んでいた頃。

気持ちが凹んでいてなかなか仕事も進まなくて
コーヒーでも飲もうとして自販機に向かう途中。

給湯室からキャッキャと騒ぐ声が聞こえてきた。
聞くつもりはなくても話は聞こえてくる。

……私のことだ。

今回のヘマ話が1.5倍くらい誇張されて
噂話の花が咲いていた。

あぁ凹む。
勘弁して。。

固まってしまった足を無理やり動かそうと
して歩き出した時。

「気持ちよくない話を大きな声でするのは感心しないわ」

と少しトーンの低い声が聞こえてきた。

杏先輩だった。
いつもの優しい声とは少し違う、
少し冷たい声。

「でも、そのせいで課長が大変な目にあったって…」

反論する女子社員。

「物事の善し悪しは立場によって違うんだから
だからどちらがいいとか悪いとか簡単に決めるべきではないわ。
…ただ、その話をする為に仕事をサボって喋ってるって言うのは善いか悪いかははっきりしてると思わない?」

そう言われ、言い返せなかった女子社員達は
そそくさと部署に戻っていった。

「杏さん。。」

「ん?」

「ありがとうございます。」

「私苦手なのよ、ああいう集まり方。」

そう言って杏先輩は近くの自販機で温かいコーヒーを買って戻ってきた。

「杏さんの、善し悪しは立場によって違うって言葉。すごく救われた気持ちになりました。」

「ふふ、あれね。私もそう言って助けてもらったことがあるの。」

だからいつか機会があったら絶対使うって決めてたのよ。

そう言って先輩は笑った。


※後輩さんのミスは課長が指示ミスしてて
そのせいでミスった、という話でした。

4/27/2024, 11:11:04 AM