いつの日にか聞いた言葉が頭の奥でこだまする。
人はなくしてから気づくんだって。
あんなとりとめのない話でも、もう二度とできないんだな。
─とりとめもない話─ #143
孤独に眠るきみの手を離さないよう傍にいたのに、
いつの間に俺まで寝てしまっていたんだろう。
─風邪─ #142
(そろそろ長編書いていこうかな……)
今の僕には、ただ雪を待つことしかできない。
溶けきってしまった氷色の心臓がまたもとに戻るまで。
貴方の体温が未だに忘れられていない。
ねえ、僕を弱くしたのは貴方なんですよ。
人を愛した分だけ苦しみが後味に残るから、氷色に染め上げていた心臓だったのに。
知らず知らずのうちに貴方に冷たい氷を溶かされてしまっていた。
信じたのにね。信じられたのに。
結局こうなるなら、僕を変えないでほしかった。
こんなことなら最初からひとの体温なんて知りたくなかった。
─雪を待つ─ #141
「ねっ、イルミネーション行こうよ」
「……は?」
行きたくない、という感情が全面に出した彼女、澄香に苦笑する。
こいつまたなんか言い出した、と言わんばかりの呆れが
まじった表情である。
「そんな顔せずにさー、たまにはいいじゃん。ね、ね、行こ?」
「...なんでこのくそ寒いときに外に出てまでイルミネーション見に行かなきゃいけないんだよ。却下」
「ええー」
まあこうなることは半分分かってたけど...。
私は澄香に不安を垂れながら、こたつの上にのっていたみかんに手を伸ばす。
ちなみに彼女は一緒にこたつで暖まりながら、来週提出だというレポートを進めている。
不貞腐れて、みかんをひとつ口に放り込むと彼女がパソコンから目を離してちらりと一瞥してきた。
「...つかなんでみかん置いてあんの」
「え?こたつといったらみかんじゃん。こたつ入荷したんだからせっかくならって」
「...せっかくってなんだ」
そう言いながらも澄香の視線は私の手元、みかんにそそがれている。
こういうところかわいいなーとか思ったり。
「澄香も食べる?」
小さく笑いながら新しいみかんに手を伸ばす。澄香は素直じゃないからきっといらないって言ってくるけど、皮をむいて目の前に置けば食べてくれるだろう。それでも素直にならないんだったら、あーんしてみよう。
...などと考えていた矢先。
「じゃあもらおうかな」
ふっと澄香が妖艶に微笑んだ。
へ...、今日は素直デーですかな...?
なんて計算が狂ったことであほなことを考え始めた私の脳。
そして、そんな脳は澄香の次の行動で完全にバグを起こし始めた。
「...ん、おいしい」
澄香は私がむこうとしていたみかんではなく、私が食べようとして片手に持っていたみかんを引き寄せてそのまま口に入れたのだった。
「...へえ...っ!?す、すす澄香さん...っ!?」
焦りすぎるとさん付けになる私のことなんかお見通しなようで、澄香は心底面白そうにふっと笑った。
「イルミネーション行くのと、私とこの暖かい場所でいっしょにいるのどっちがいい?」
「~っ、ずるい...!」
そんなの澄香ともっと多くいれるならどこでもいいって知ってるくせに。
─イルミネーション─ #140
それはまるでコップのよう。
小さい頃から愛をたくさんたくさん注がれると、大きくなってからコップの半分まで注がれても、ちょっとしか、という思考にしかならない。
逆に小さいうちから愛が注がれなかった子どもは、大きくなって半分まで注がれると、こんなにも、という思考になる。
今苦しんでいる人はいつか誰よりも強くなれるよ的な言葉をよくきくけどさ。
それって、小さいころから愛を受けなかった子どもは大きくなってから受け取る愛の捉え方が違うだけじゃんね。
我慢してた痛みのせいで大きくなってもそれなりの痛みは感じにくくなってるだけじゃんね。
受け取る愛の量は、我慢している痛みの量は、ぜんぜん違うんだよ。
正直、小さいころから溢れんばかりの愛を受け取った子どもを、我慢が少なかった子どもを、羨ましいって思っちゃうんだよね。
─愛を注いで─ #139
(自分の誕生日に推しの新曲が上がってるなんて。新曲最高すぎたし。結構嫌いな日だったけど今年だけはどこか違う1日になった。ありがとう。
ちなみに、ひとりさびしくチョコパイかじりました)