「お兄ちゃんは悪くないの...っ。ぜんぶぜんぶ僕のせいで...っ」
手折ってしまった小さい向日葵を手にし、太陽の光で反射する弟の涙を綺麗だと思ったことを覚えている。
泣き顔は覚えているのに、笑った顔がどうしても思い出せなかった。
遠い記憶の中だ。
─太陽の下で─ #123
(前の鏡の話の続き?です。切ない系の引き離された双子の兄弟が最高だと思ってます。
...ああやばい。現実逃避すな)
落ちていけたら、どんなにいいだろう。
なにも気にせずにどこまでもどこまでも。
落ちていくとはどのような感覚なのだろう。
なににも縛られていなくて楽?それとも辛い?
少なくとも今よりは息がしやすいんだろうな。
見えない糸でか細い糸で、吊るされてどこまでも続く足元の闇を見せられながら、舌を噛んで落ちないように努力して、踏ん張って。
もうつらいよ。
いっそのこと、どこまでも落ちていきたいの。
なんのために踏ん張っているのかすら分かんなくなっちゃったんだってば。
─落ちていく─ #122
ごめんね。
ずっとずっと負い目が拭いきれないんだ。
きみの隣に俺がいていいのか、という負い目。
だって、俺が隣にいることできみも後ろ指をさされ、こころのどこかで怯えながら生きていくことになるんだ。
結婚もできない。
夫婦と呼ばれる普通を名乗れない。
俺と同じ思いをしてほしくない。
俺といることで傷ついてほしくない。
ぐちゃぐちゃの感情のままそう吐き出したら、
「...お前と離れるより全然いい」
なんて言われたっけ。
ひとりきりのベッドのなか、冷たい息を吐き出す。
あの日と同じように窓の外では雪に不似合いな赤のライトがちらついていた。
─夫婦─ #121
まだBLの存在を知らなかった頃に、NLの小説を書いていたときのはなし。
NL書いてたはずなのに、なぜか変な方向に曲がってあれよあれよという間に、今思えばぜったいBLじゃん、の小説が出来上がってた。男同士の恋愛を知らないはずなのに。
いちおNLで完結させてたと思うけど、描写は男同士のほうが圧倒的に多かった。
ちょっと読み返したい…ああ削除しなきゃよかった…
─どうすればいいの?─ #120
(どうしようもないほど根っから腐りきってたし、削除したから読みたくても読めないしで、いろんな意味でこれどうすりゃいいの?)
「...俺の宝物? そんなの訊いてどうすんだ」
「宝物ってさ、幸せの定義と一緒でなんだかよく分かんなくない? これが俺にとっての宝物です、なんて簡単に言えないよ」
「簡単に言えないから宝物なんじゃないか?」
「...どういうこと?」
「宝物だって言えるほど大切なものが見つかってないから、そう思うんだろ。それこそ幸せの定義と一緒で、別に探すもんでもねえんじゃね? 気づいたときには、それが宝物になってたりするもんだろ」
「...ふーん。よくわかんないや」
「ま、いつかお前も見つかるだろ」
「“お前も”って...そっちはもう見つかってるの?」
「......」
お前と過ごしているこの時間が宝物だなんて言えるかよ。
─宝物─ #119