消さなくてはいけないと、思った。
ちかくにいたら、依存して、ずるずると苦しむことになるって分かりきってた。
分かりきってたから、もっと早くさよならを言わなきゃいけなかったんだ。
「話って、なに?」
唇が震える。
これを言ったら、なにもなもぜんぶぜんぶ、おわり。
言わないで離れようと思った。離れるはずだった。
でも、自分から離れられないから。
離れなきゃいけない状況をつくるしかなくて。
それなのに、「好き」を言ったら嬉しそうに微笑むから
────…ああもう、離れられないじゃん。
─さよならを言う前に─ #39
いつも薄暗いそれが、一段と暗い今日。
明日の心模様は晴れてほしい。
そんなことすら思うことができない。
─空模様─ #38
「なあ、もう終わりにしよう」
「…お前いなくなっても、俺生きていけると思ってんの」
「生きていけるだろ。こうやって会話するのも結構きちーんだなこれが」
「頑張れよ。俺、お前いなくなったら生き方分かんねーんだけど」
「んなことないって。大丈夫大丈夫」
「おっまえな」
「それに最近はあんま壊さないじゃん。ストレス減ってるんじゃね?荒れてるときなんか手に負えないほどだったのに。ま、この世界のなかなら一回出れば修繕されるからどれほど壊してもよかったけどね」
「…その世界がなかったら俺潰れんだけど」
「あ、この世界が消えたら現実で暴れないようにしろよ?前にいたんだな、現実とここの区別がつかなくなって、現実で大暴れした奴」
「俺もそうなるけど」
「あーじゃあ、一ヶ月に一回くらいは出てきてやるよ。こっちの住人も結構忙しくてね」
「そうしろ。つかもっと出てこい。そっちの鏡の世界はお前出てこないと、ただの鏡で入ろうとしても入れねーんだから」
あー時間あったらね、と青年が背を向けたとたん、幻想だというきらびやかな都会は消え、ぐるりと鏡が歪んだと思ったら、鏡の向こうにはなんの変哲もない自分の姿が写っていた。
─鏡─ #37
「いつまでも捨てられないものなんてあったら、こんな暗いこと考えてない」
俺は数年前お前にそう言った。
そのときのお前があんな顔してた理由が今分かった気がする。
「ごめん。俺、お前への想い捨てられそうにない」
この答えをずっと待っていたんだろ、お前。
悔しいけど、いつまでも捨てられないものができたんだ。
そう言うと、そいつは泣きながら笑った。
─いつまでも捨てられないもの─ #36
たぶん、最初から諦めていた。
人生なんてどの道を選んでもきっといつか後悔するし、そんなゲームのような人生ならば真面目に生きる必要はないのだと。
だから“それなり”でよかった。
何かに対して誇らしく思ったことなんてない。
ああ誰か、誰でもいいから生きる意味をください。
生きていいよって言ってほしいだけなんだ、きっと。
─誇らしさ─ #35