しずく

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「なあ、もう終わりにしよう」
「…お前いなくなっても、俺生きていけると思ってんの」
「生きていけるだろ。こうやって会話するのも結構きちーんだなこれが」
「頑張れよ。俺、お前いなくなったら生き方分かんねーんだけど」
「んなことないって。大丈夫大丈夫」
「おっまえな」
「それに最近はあんま壊さないじゃん。ストレス減ってるんじゃね?荒れてるときなんか手に負えないほどだったのに。ま、この世界のなかなら一回出れば修繕されるからどれほど壊してもよかったけどね」
「…その世界がなかったら俺潰れんだけど」
「あ、この世界が消えたら現実で暴れないようにしろよ?前にいたんだな、現実とここの区別がつかなくなって、現実で大暴れした奴」
「俺もそうなるけど」
「あーじゃあ、一ヶ月に一回くらいは出てきてやるよ。こっちの住人も結構忙しくてね」
「そうしろ。つかもっと出てこい。そっちの鏡の世界はお前出てこないと、ただの鏡で入ろうとしても入れねーんだから」
 あー時間あったらね、と青年が背を向けたとたん、幻想だというきらびやかな都会は消え、ぐるりと鏡が歪んだと思ったら、鏡の向こうにはなんの変哲もない自分の姿が写っていた。
 


─鏡─ #37

8/18/2024, 11:49:38 AM