特別な存在
お互い知り合ったのは、この世界の地獄のような、掃き溜めのようなところ。似た境遇で親近感が湧いて面白半分で一緒に居た。
お前のことを知る度にもっと興味が湧いた。
なんでも知りたくなって、なんでも話したくて、お前になら俺の全部をさらけ出せた。
愛よりももっと深いナニか。
俺にとってお前は唯一無二、特別な存在だった。
お前がいなくなった今、俺はこれからどうい生きていけばいい?
どっちに行けばいいか、どうしたらいい、わからないんだ。
お前という特別な存在は俺にとって人生の指針で生きる糧だったんだ。
バカみたい
酒を飲むと頭が正気じゃなくなって何も考えなくて済むから、この仕事は天職だと思った。
でも実際そこは地獄でしかなかった。
売上のことしか頭にないマネージャー。
男のくせに女々しく嫉妬や嫌がらせをして蹴落そうとしてくる同僚。
メンタルが不安定で狂った客たち。
家に帰って次第に酒が抜けると、頭がはっきりしてきて考えが巡る。
「はぁ…。バカみたいだな。ははは。」
醒めたばかりなのに、冷蔵庫から酒を取り出して俺はまた現実逃避する。
バカみたいだけど、バカでいれば楽な世の中だから。
二人ぼっち
みんなと一緒に居るけど、心は誰とも繋がっていない。
みんなでワイワイして楽しそうに見えるけど、空気を読んで楽しそうにしてるだけ。
裏ではお互いに見下してるのを知ってる。
私は一人ぼっち。
***
一人でいるのは少し寂しい、けど群れて歩くのもなんだかみっともなくて。
誰かと親しくなろうとするけど、心の内は分かり合えない。
中途半端な気持ちのまま、人付き合いを続けている。
僕は一人ぼっちだ。
***
「あの、隣、空いてますか?」
「あ、はい。どうぞ。」
ひと席分開けて、隣に座る。
一人ぼっちと一人ぼっち。
そこに会話がなくても、なぜか居心地がよかった。
夢が醒める前に
こんなの夢だってわかってる。
私があなたに本気で愛されてないことなんて気づいてるよ。
でもいいの、2人きりで内緒で会ってるこの時間が、まるでフワフワして楽しい夢を見てるみたいで私は幸せ。
悪いことしてる自覚はあるよ、だけど私にだって夢を見る権利、幸せになる権利はあると思う。
私は誰かを愛してるあなたを愛するのが好き。
ダメだって言われても、どうしても他人のものが欲しくなっちゃうんだもん。
あなたが帰ると、途端に夢から醒める。
現実は汚くて暗くて苦しくて辛くて吐き気がする、全然楽しくない、消えてなくなりたくなる。
ねぇお願い、本気で愛さなくてもいいから夢から醒める前に私を助けてよ。
胸が高鳴る
卒業して俺は春から東京の大学に通う。
少しでも早く環境に慣れるために、俺は3月中にあっちに上京することにした。
築20年以上は経っているボロアパートだけど、俺は大学生という肩書きとこれからの新生活に胸を高鳴らせる。
大学の入学が近づくと、次第にアパートにも住人が増えてきて賑やかになってきた。
空き室だった隣にもついにお隣さんが越してきて、昼頃にインターホンが鳴る。
出るとそこには、俺の身長の半分くらいしかない小さい女の子が立っていた。
「…あ、あの、隣に越してきた者です。」
律儀に菓子折りを持って挨拶に来てくれた。
「お、おぉ。あざっす。えーっと…お母さんとかお父さんは?」
あまりに小さいから小学生だとばかり思って親の姿を探してしまう。
「え!?あ!えっと…私、春から近くの大学に通う、大学生でして…。」
「うっそ!俺とタメ?あ、すんません!てっきり小学生かと。うわ〜本当すいません。」
顔を真っ赤にして困った顔をされたから、俺もパニックになってしまいアタフタしていると、彼女は一変して笑いだした。
「ふっ、あはははは!いや、大丈夫です、大丈夫です。ちっちゃいからよく間違えられるんです。改めてよろしくお願いします。」
「……う、っす。」
笑った。初対面で色々と最悪な印象を残してしまったが、彼女の笑顔が今まで見たどんな笑顔よりも可愛くて、俺の胸はまた高鳴った。