どこまでも
私は自然が好きだ。
どこまでも続く空を眺める。
大好きなあなたも、この空をどこかで見ているんだね。
まるで、どこまでも続く空を通じて、大好きなあなたと視界を共有しているよう。
同じ惑星に生まれて、同じ空を眺めている。
あなたと同じ惑星に生まれた事が私の最大の幸福です。
未知の交差点
交差点というものは昔から事故や怪談話とのむすびつきから、よくいわくつきになる。
僕も実際に交差点で不思議な体験がある。
ワープする交差点だ。
おかしな奴だと思うだろうが、実際に体験してしまったのだから事実は変えられない。
仕事で転勤してきた関東の某所、少しずつ道も覚えて来たある日、早めに上がれたのでたまには違う道に行って見たくなった。
今まで行ったことのない未知の道路、未知の交差点を曲がると、なんだか街の雰囲気が一変したように感じた。
どうにも建物が木造の古いものばかりで、いわゆる長屋のようなものが建ち並んでいた。
驚いたのはその長屋の周りには着物を着た人しかいなかった、まるで時代劇のセットが突然目の前に現れたみたいに。
面白そうだと思い長屋の入口をくぐろうとしたら、何か透明の壁でもあるかのように先へは進めなかった。
引き返すと、いつもの道に戻った。
後日またその交差点へ向かおうとするが、どうしても道順が思い出せない。
マップアプリでいくら探しても長屋のようなものはなかった。
気になって図書館でこの辺りの旧地図を調べると、江戸時代は庶民が多く集まる長屋が密集している場所だった。
やはり交差点というのは何か時空の歪みのような事が起きやすいのだろうか、僕はまた未知の交差点を見つけられることを願う。
一輪のコスモス
目を逸らした隙に机に一輪のコスモスが置いてあった。
私は保育士をしていて、たまたま引越しで年中さんの途中から新しく入る子を担当することになった。
初めは慣れない環境で私ともお友達ともあまり近づいてくれなかった。
ある春の日のお外遊びの時間、女の子達に囲まれてお話をしていた。
「せんせーは、なんのおはながすきー?」
「ん〜?お花かぁ…先生はコスモスのお花が好きだよ。」
ふと視線に気づいて顔を上げるとあの子が少し離れたところからじっとこっちを見ていた。
「おいで」と手招きすると、そっぽ向いてどこかへ逃げてしまった。
「仲良くなるにはまだまだ頑張らないとな」少し落ち込んだが、気を取り直して子供たちを寝かしつける。
ようやくお昼休憩、お弁当を取ろうと目を逸らした時、誰かの気配を感じた。振り向いた時には机に一輪のコスモスが置いてあった。
タッタッタと走る音が聞こえて廊下を見ると、急いで部屋に戻る、あの子の後ろ姿が見えた。
秋恋
「秋に始まる恋は長続きするって知ってる?」
いたずらっぽく微笑んで聞く、君のその眩しい笑顔が秋晴れの太陽に反射して眩く光る。
「じゃあ、始めてみる?長続きする恋。」
反撃しようと、そんなことを口走るとさっきまでま余裕だった君の表情が一転して頬が紅葉していく。
まるで紅葉みたいな君に思わず見惚れる僕。
秋は果実も恋も、みのる季節。
愛する、それ故に
学校帰り不意に友達に聞かれた。
「ねぇ、推しと付き合ったり結婚したりしたいと思う?」
そんなとんでもない事思うわけない。
「ないね。全く。」
「えー!そうなん?でも、しょっちゅう好きだの愛してるだの言ってるじゃん?」
興味津々の様子で質問攻め。
「まぁ、人それぞれあるからそういう下衆な考えのファンもいるかもしれないが私は違う。」
「じゃあさ、あんたにとって推しってなに?」
待ってましたと言わんばかりに私の心の中の早押しボタンが『ピンポーン!!』と鳴る。
「ズバリ、命の源! 推しは生きる活力!推しがいるから生きられる!推しのために健康を維持し、推しのために長生きする!愛ゆえに、彼らの幸せを常に願う!」
天を指さし高らかにそう言うと、いつの間にか周りで聞いていた人達から拍手喝采を浴びていた。