27(ツナ)

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8/18/2025, 11:05:26 AM

足音

これは私の友人の話です。
大学進学を機に友人は都会で一人暮らしをすることになり私はそのまま田舎に残る形で別々になりました。
ある日の夜、友人から電話がかかってきたのです。
「助けて。怖い。ストーカーかもしれない。誰かわからないけど、毎日私の部屋の中に人が入ってくる!足音が聞こえるの。」
「えっ!?それって、警察に行った方が…。」
「行ったよ!!でも、取り合ってくれなかった。確かな証拠は持ってなかったし…。証拠撮ろうとしてビデオカメラ回してたけど、足音しか聞こえないの。上手くカメラの画角をかわして姿が全く映らなくて…。」

私は生まれつき霊感というものがあり、集中すると多少は霊を視ることが出来ました。
私は友人には視えない何かが視えるかもしれないと思い友人に頼んでビデオカメラの映像を送ってもらいました。
すると、そこには膝から下の両足のない20代くらいの青年がカメラの方を見てぼーっと立っていました。
「これだ」と思い、友人にすぐ連絡しようとしました。でも、ふと疑問に思ったのです。
ビデオに写った霊は両足がなかった。
どうして、足音がするんだろう。
もう一度、ビデオの映像をよく見ました。
すると、友人のベットの下の隙間に生きた人間の顔がうっすら見えました。
足音はこれが原因だったのです。

すぐに友人に連絡を入れました。しかし、一向に繋がりません。それから何度も連絡すると、1度だけ通話がつながりましたが、『ダッダッダッ』地団駄を踏みながら歩くような足音だけが聞こえてきました。

8/17/2025, 12:04:08 PM

終わらない夏

夏の魔性。
夏だけは毎年待ち遠しくて、終わってしまうとものすごく寂しく感じる。
夏は魔性の季節だ。

暑さで人を惑わせて、あの世へ行ってしまうヒトも多い。

川で溺れた親戚の弟がいる。
きっと彼も夏の魔性に当てられて、死の世界へと誘われた。
毎年夏はやってくる。魔性の夏が。
終わらない夏が。

8/16/2025, 1:59:18 PM

遠くの空へ

僕が幼い頃に母は体を悪くして亡くなった。
当時の僕はまだ言葉を覚えたてで、状況を理解することができなかった。
父は男手ひとつでそんな僕を育ててくれた。

公園で遊んでいた時、周りはみんな母親と来ていたり両親と遊んでいるのを見て不思議に思った。
「パパ〜、ママは?」
それは悪意のない純粋な言葉だった。
父は慎重に言葉を選んで僕に伝えた。
「ママは…遠〜くのお空に居るんだよ。でも、お空から僕たちを見守ってくれてるんだ。」
「なんで僕たちを置いていっちゃったの?」
「パパや君もそうだけど、僕たちはもともと遠いお空からやって来たんだ。ママはどうしても帰らなくちゃならなくなったんだよ。」
父はなんとかなだめようと優しく話してくれた。

「でも、僕はママがいなくて寂しいよ…。お迎え行く!」
そう言って僕は空に近づくためにひたすら走ったが、石につまづいて転んでしまった。
「…うっうわあああん!わあああ!」
気づいた父がすぐに駆けつけて僕を抱きしめた。
「…ごめん。ごめんな。」
抱きしめられた僕の肩口が父の涙で濡れて、ようやく母にはもう二度と会えないのだと自覚した。

8/15/2025, 12:07:53 PM

!マークじゃ足りない感情

「人の感情ってさ、ある一定のキャパ超えると無くなるよね?エクスクラメーションマークすら出ない。」
暑さしのぎに入ったカラオケの一室で歌も歌わず友達とダラダラ駄弁っていた。
「急になに?エクス?なに?…一定のキャパってなに?感情無くなったことあんの?」
「…ある。」
「えー、まじか。何があったのさ?」
クーラーの風に当たり続けて頭がボーっとして来る。
「寝てる時にな顔になんか落ちてきたの。んで、電気つけて、顔を手で払ったらボトって落ちたんよ。」
「え…な、何が?」
友達のあまりに真に迫った様子に眠気が覚めて、ゴクリと唾を飲む。
「……ゴキブリが。」
「──。」
ホントだ。感情のキャパ超えると人って無になるんだ。

8/14/2025, 10:51:07 AM

君が見た景色

君は霊が視えると言った。
そんなの嘘だと言うと君はただ悲しい顔をした。
君のことは好きだったけれど、君の言うことが信じられなくて辛かった。

僕は転んで怪我をして角膜を損傷してしまった。
視力が回復する兆しはなく、角膜の移植手術をすることになった。
ドナーが見つからなかったなか、近所に住む君が話を聞きつけてドナーになると言ってくれた。

手術は無事成功した。いよいよ包帯を摂る事になり、久しぶりに外の景色を見た。
今まで見えなかったモノが視えるようになった。
「これが、君が見ていた景色か。」
その時、僕はやっと君と視界を共有できたようで嬉しかった。

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