27(ツナ)

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7/1/2025, 11:19:44 AM

「夏の匂い」

昼間に入道雲を見た。

夕方、遠くから微かに雷の音と雨の匂いがする。
僕は夕立が来る兆しに香る、この夏の匂いがすごく好きだ。
そろそろ来るかな?
わざと外に出て次第に暗くなる空を眺める。

ポツと鼻先が水に濡れた。
すると間髪入れずにポツ、ポツ…ザーッと豪雨が全身に降り注いだ。

汗でベタついた肌に冷たい雨粒が心地よい。
あっという間に去って行った夕立の後の空は澄んで綺麗な夕焼けが待っている。

夏だけの特別な体験だ。

6/30/2025, 10:28:03 AM

「カーテン」

私は朝が大の苦手だった。
高校卒業、大学への進学を機に両親とは離れて一人暮らしをするようになった。

初めの頃は慣れない一人暮らしにかなり苦戦して、朝が苦手なこともあり遅刻もしょっちゅうだった。
そんなある日、実家から荷物が届いた。
中にはメッセージと自分の部屋で使っていたカーテンが。
「って、なんでカーテン!?普通、目覚まし時計やらじゃない?」

『どうせそっちでも寝坊助なんじゃろうけぇ、慣れとるこのカーテン使いんさい。 あんたの可愛いママより♡』

小学生の頃からずっと使っていたピンク色のストラップのカーテン。
眺めていると、毎朝母親に「早う起きんさい!」と叩き起されていたのを思い出して、笑みがこぼれた。
「はいはい。明日から早起き頑張るよ。」

6/29/2025, 10:30:30 AM

「青く深く」

何かに悩んだり思い詰めた時は海に身を委ねる。

ただ静かに深く深く私を包み込んでくれる果てしない青。
そのまま海の中に溶けるように沈んでいく。

この時だけはこの世界に私だけ。
耳は海水で塞がれて、少し息苦しい…けど、この息苦しさが私に生命の実感をくれる。

もっと青く深く、青く深く、
溶けて私という存在が無くなってしまいそうな程、あなたに溺れたい。

6/28/2025, 10:34:11 AM

「夏の気配」
(※6/27「まだ見ぬ世界へ!」別視点のお話。)

ようやく、どんよりした梅雨が明けた。
朝になると野鳥の声が騒がしく、夜になると田んぼの蛙たちの大合唱が聴こえてくる。
この時期になると、いつも夏休みに泊まりに来る親戚の2個下の妹のことを思い出す。

親から今年も親戚が来ると聞き、俺はすぐに準備に取り掛かった。
毎年、家の近くの自然に連れて行くと彼女はとても楽しそうにしていた。
それが俺は嬉しくて、毎年喜んでもらえるように下調べをしていた。

たまたま親が近くの小川に蛍を見に行こうと誘ってくれて「それだ!」と思った。
あっという間に時間が過ぎ、ついに妹たちが遊びに来た。
「早く早く」と急かす妹をなだめて夜を待った。
目を閉じた妹の手を引いて近くの小川まで連れて行った。
初めて蛍を見たのか目を開けた妹は感動で蛍の光のようにキラキラと目を輝かせていた。

6/27/2025, 11:11:06 AM

「まだ見ぬ世界へ!」

小さい頃、田舎に住む親戚の家に泊まりに行くのが夏休みの恒例行事だった。
ビルや住宅に囲まれた殺風景なところで生まれ育った私にとって毎年、冒険のようだった。

その家には2個上の男の子がいて、兄のように慕っていた。彼はいつもこっちにはない大自然へと私を連れていってくれた。
今年はどんな所へ連れていってくれるのかな?
と期待を胸に親戚の家に着く。

「久しぶり!兄ちゃん!遊ぼ!どこ行く?」
「あー、久しぶり!…うーん、今日はまだ行かないよ。」
「え?じゃあ、いつ遊びに行くの?」
楽しみにしてたのにお預けをくらって少しムッとすると、兄ちゃんは得意げにニヤッと笑った。
「夜までまってな!すっげぇモン見せてやる!」

ソワソワしながら夜になるのを待った。
「よし!そろそろだな、まだ見ぬ世界へ〜行くぞ!…そうだ、目つぶってて。」
目をつぶりながらヨタヨタ歩く私の手を引いて真っ暗な夜道を進む。
「よしっ、着いた!目開けてみ。」
ゆっくり目を開けると、少し離れた小川の辺りに黄緑色の小さな光がまるで冬のツリーの電飾のようにキラキラ輝いていた。
「!!!あ、アレ何!?」
「見たこと無かったろ?蛍だよ。綺麗だよな。」
あまりに現実離れした綺麗な景色に私は声も出せずただ感動した。

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