「まだ見ぬ世界へ!」
小さい頃、田舎に住む親戚の家に泊まりに行くのが夏休みの恒例行事だった。
ビルや住宅に囲まれた殺風景なところで生まれ育った私にとって毎年、冒険のようだった。
その家には2個上の男の子がいて、兄のように慕っていた。彼はいつもこっちにはない大自然へと私を連れていってくれた。
今年はどんな所へ連れていってくれるのかな?
と期待を胸に親戚の家に着く。
「久しぶり!兄ちゃん!遊ぼ!どこ行く?」
「あー、久しぶり!…うーん、今日はまだ行かないよ。」
「え?じゃあ、いつ遊びに行くの?」
楽しみにしてたのにお預けをくらって少しムッとすると、兄ちゃんは得意げにニヤッと笑った。
「夜までまってな!すっげぇモン見せてやる!」
ソワソワしながら夜になるのを待った。
「よし!そろそろだな、まだ見ぬ世界へ〜行くぞ!…そうだ、目つぶってて。」
目をつぶりながらヨタヨタ歩く私の手を引いて真っ暗な夜道を進む。
「よしっ、着いた!目開けてみ。」
ゆっくり目を開けると、少し離れた小川の辺りに黄緑色の小さな光がまるで冬のツリーの電飾のようにキラキラ輝いていた。
「!!!あ、アレ何!?」
「見たこと無かったろ?蛍だよ。綺麗だよな。」
あまりに現実離れした綺麗な景色に私は声も出せずただ感動した。
6/27/2025, 11:11:06 AM