「まだ見ぬ世界へ!」
小さい頃、田舎に住む親戚の家に泊まりに行くのが夏休みの恒例行事だった。
ビルや住宅に囲まれた殺風景なところで生まれ育った私にとって毎年、冒険のようだった。
その家には2個上の男の子がいて、兄のように慕っていた。彼はいつもこっちにはない大自然へと私を連れていってくれた。
今年はどんな所へ連れていってくれるのかな?
と期待を胸に親戚の家に着く。
「久しぶり!兄ちゃん!遊ぼ!どこ行く?」
「あー、久しぶり!…うーん、今日はまだ行かないよ。」
「え?じゃあ、いつ遊びに行くの?」
楽しみにしてたのにお預けをくらって少しムッとすると、兄ちゃんは得意げにニヤッと笑った。
「夜までまってな!すっげぇモン見せてやる!」
ソワソワしながら夜になるのを待った。
「よし!そろそろだな、まだ見ぬ世界へ〜行くぞ!…そうだ、目つぶってて。」
目をつぶりながらヨタヨタ歩く私の手を引いて真っ暗な夜道を進む。
「よしっ、着いた!目開けてみ。」
ゆっくり目を開けると、少し離れた小川の辺りに黄緑色の小さな光がまるで冬のツリーの電飾のようにキラキラ輝いていた。
「!!!あ、アレ何!?」
「見たこと無かったろ?蛍だよ。綺麗だよな。」
あまりに現実離れした綺麗な景色に私は声も出せずただ感動した。
「最後の声」
大好きだった彼と距離を置くことになった。
大好きだったけど、一緒にいるのが辛くて好きなのに辛い…どうしたらいいかわからなくなった。
大泣きしながら「少し距離を置きたい…。」という私を彼は責めず静かに頷いてくれた。
距離を置けば何かが変わると思った。
けど、結果は変わらなかった。
最後の時、夜景の見える公園で綺麗な景色を眺めながら彼と最後の時間を過ごした。
時間は穏やかに過ぎて別れの時、なかなか帰らない2人。決意したものの彼のことは好き。でも、一緒には居られない。
「…私なんかに無駄な時間を使わせてごめん。」
涙ながらに言うと抱きしめられた。
「そんなことないよ、君と居た時間は最高の宝物だよ。無駄な時間なんか1秒もなかった。」
耳元で聴こえる彼の優しくて綺麗な最後の声。
きっと私はこの声を一生忘れられない。
「こんな私を愛してくれてありがとう。」
「小さな愛」
仕事でヘトヘトになって帰った。
「ただいま…。」
時間は既に23時を回っていた。
妻も子供も眠っている。
お腹がすいてテーブルを見た時、妻の手作りの大きなハンバーグプレートとその横に子供が描いた僕の似顔絵があった。
ふわふわで美味しい手作りのハンバーグと画用紙いっぱいに描かれた似顔絵と「いつもありがとう」の文字。
心が温まった。
2人の小さな手から送られた大きな大きな愛。
「空はこんなにも」
恋に落ちた。
いつも仏頂面で笑わない人と思っていた彼が、不意に見せた笑顔に。
空はこんなにもどんよりしてるのに、私の心は澄み切っていて気持ちいい。
これまでの些細なできごとや嫌な思い出がまっさらになる。
空はこんなにも重苦しいのに、私の心は空に飛びそうなほど軽やかで楽しい。
自然と顔がほころび、辺りの景色がキラキラ輝いて見える。
明日も彼の笑顔が見れるといいな。
「子供の頃の夢」
子供の頃の夢を覚えていますか?
「はい。」
その夢は叶いましたか?
「…いいえ。」
子供の頃はその夢が叶うと思っていましたか?
「はい。」
現状に満足していますか?
「…いいえ。」
まだ、あの頃の夢を諦められませんか?
「…はい。」
もし人生を巻き戻してやり直せるなら、子供の頃の夢を叶えたいですか?
「はい。」
最後の問いに答えた後、僕を乗せたタイムマシンは過去へと発進した。