憤慨しながら、廊下を歩く。
窓の縁に積もった埃。
毛先の絡まった絨毯。
私の屋敷なのだから、綺麗でなくては。
使用人は新しくするべきだろう。
沸き立つ激情を抑え、私室に入る。
一流に作らせた花瓶。
生けてある花は萎れてしまっている。
一級の木で作らせた一等の机。
その上にあるカレンダーは去年のままである。
まったく、使用人は何をしているのか!
主人の机は常に最新の状態でなくてはならない!
私が死んでいようとも、守って貰わなくては!
世界を救うために、恋人を手にかけた
世界に平和が訪れた。
恋人が育てていた薔薇は枯れ果てた。
肉を断つ感触も、耳に残る呻き声も、
思考を縛り付けて、離してくれない。
温かな日差し、荒れた家。
キッチンに立つ君はもういない。
カーテンを開け、窓の外を覗く。
君を犠牲にした世界は、
僕が見るにはあまりにも美しい平穏だった。
70bpmで拍動してるあなたの心臓
測定された数字でしか、
私はあなたの鼓動を知らない
69、67、…。
少しの変化を恐ろしく感じて、
ずっとモニターを見つめている
いつか、元気になったら、
あなたの心臓の鼓動を
直に感じてみたい。
だから、早く目を覚ましてね。
踊り狂って、舞台の上でこときれる。
そんな幸福を夢見て、
私は今日も踊るのです。
アンコールは何度でも。
爪先が擦り切れようと、
指の一つが折れようとも。
いつか、その時が来たら、
貴方が私の体を燃やしてくださいね。
皆様が私のことを指さしております。
信じられない、と言いたげな顔で、
立ち尽くしております。
せっかくの絨毯も、アンティークナイフも、
血が固まってしまって、台無しです。
時計の鳩が、三度鳴きました。
日が昇るには、未だ早いでしょう。
では、ご質問です。
私は、殺したのでしょうか。
それとも、殺されたのでしょうか。