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9/15/2024, 3:59:59 PM

「君からのLINE」




_____ポコン_______ポコン、ポコン


数分前から急に鳴り始めた私の携帯。
それは家族や友人から送られてくるバースデーメッセージを表示していた。
日付が変わった瞬間に連絡をくれるのは去年とほぼ同じメンツで。
少し間を開けてから感謝の言葉とともに【こんな時間まで起きてるなんて暇なの?】なんて照れ隠しを添える。
こうして私のためにしてくれる相手がいることは凄く嬉しいしこの繋がりは大切にしなければならないと思うけれど。
でも、1番欲しい相手からの連絡だけがない。


「わかった、必ず日付が変わった瞬間に連絡する。だから他の連絡は見ずに待っていてほしい。」
私のわがままに対してそう言ってくれた昨年は本当に変わって数秒で連絡が来た。文はそれなりに長かったから事前に入力して待機してくれてたのかななんて、嬉しくて仕方なくて返事をする前に電話をかけたのをよく覚えている。


彼は記念日を自ら作るタイプではないけど、私が決めた日はどんなくだらないことでも覚えてくれているから誕生日を忘れたということは考えにくい。
もしかして寝てるのかな……まぁ普段はこんな時間まで起きてることないだろうしな……なんて自分に言い聞かせるように色々考えてから、自分ももう寝てしまおうと立ち上がる。
明日起きた頃には連絡が来てるかもしれないし、クリスマスプレゼントのように寝て起きたら届いているというのも悪くはないだろう。
そう思えば落ちかけていた気分もだいぶ持ち直したように感じる。


自分でご機嫌とれるようになったことに成長を感じていると

__ピンポーン

と、人が訪ねてきたことを知らせる音がなった。
こんな時間に誰だろうか、不審者……?と警戒しつつもドアの覗き窓をから外を覗いてみればそこには連絡を待っていた人がいた。
大慌てで鍵をあければ
「誕生日おめでとう。今年も無事に祝えてよかった。
だがこんな時間にすまないな。まだ寝てなかっただろうか」
なんて笑いかけてくれるから、彼からの連絡がなかったことはすっかり頭から飛んでしまっていた。


翌朝、そのまま家に泊まった彼になぜ連絡をくれなかったのか聞いたところ
「日付がかわったのがちょうど運転中だったんだ。横につけて連絡しようかとも思ったがそれに満足して寝られたら困るから、あえて連絡を入れなかった。悪いことをしたな」
とのことだった。ちなみに連絡せずに家に来た理由は私がなにげなく呟いた
「記念日とかのサプライズって憧れるなぁ」
という一言が聞こえていたかららしい。つまりはこれも私のわがままを叶えるためということだ。彼らしいと言えば彼らしいしとても嬉しいのだが、
「不安になるので連絡だけは入れて欲しい」
と言えば
「連絡を入れた状態でサプライズなんて出来るのか…?」
と悩み始めてしまった。私のわがままのせいであることは100も承知なのだが、なんとか叶えようとしてくれてるところをみれるのは嬉しいので少しばかりそのままにしておこうかと思う。


あぁそうだ、やっぱり君からの連絡は欲しいから後で送ってもらおうかな
別に時間ピッタリじゃなくたって、君から貰えるなら何時だろうと構わないから

9/6/2024, 1:13:00 PM

「時を告げる」


起床の時間ですよ、起きてください。……

これは俺からあなたへ自発的に声をかけることが出来る数少ない言葉。
……時間や話す内容すら設定されているこれを自発的というのはおかしいかもしれませんが。
それでもこれがあなたの助けになるのなら、俺は毎日同じ時間同じ内容であなたへ声をかけましょう。
だからどうか。一度で、一言でいいのです。お言葉を頂けませんか。
たった一度、たった一言でも頂ければ俺はそれだけで……なんて。
おかしな事を言ってしまったようで申し訳ございません。
たとえあなたに届くことがないとしても、己の立場を弁えた発言とはとても言えませんね。

あんなことを言った手前信じて頂けないかも知れませんが、俺はあなたが今日も俺の声で朝を迎えて頂ければ満足なんです。
あなたが俺という存在に何かを思うことがなくても、俺にはあなたしかいないのですから。
だからどうかお気をつけて、明日も俺に声をかけさせてくださいね。

いってらっしゃいませ。お帰りをお待ちしております。

8/5/2024, 5:20:50 AM

「つまらないことでも」


ひとりでやるのは嫌。でも君とならやってあげてもいいかも

なんて普通の人なら何様だよとか、なんで自分がとか言いそうなことでも

お前はまたそうやって…

って言ってため息つきながらも一緒にやってくれようとする君とだから、嫌なこともつまらないこともやろうと思えたんだ。まあ君は驚くほど炊事や洗濯、掃除その他諸々の家事が何一つ出来ないから、ほぼ私の見張り兼話し相手みたいな感じだったけど。それでもひとりで淡々とやるより何倍もやる気になれて、どんなことでも全然嫌だと思わなかったんだ。

ねぇ、君がいることが重要なんだよ。早く帰ってきてよ。
君がいなくなってもう半年経つんだよ。家事も全部君と私2人のためだって思えたからどんなに疲れてても毎日頑張れてたのに。君が居なくなってからはてんで駄目になっちゃった。部屋は君がいた頃の面影が無いくらいには荒れているし、ご飯だって即席のものばかり。洗濯するのだって毎日じゃなくなってお風呂もシャワーで済ませる日が増えたんだ。

こんな私を見たら君はなんて思うのかな。

お前は本当に真面目だな。俺は家事ができないからいつも助けられてるよ。本当は出来るようにならないといけないのは分かってるんだけどな…お前が笑顔で任せてって言ってくれるから、ついそれに甘えてしまう。いつもありがとう。

って君が言ってくれるのが嬉しくて、私なんかより全然真面目な君が私を頼ってくれるのが誇らしくて仕方なかった。その言葉が私の原動力になってたんだ。
私の行動にいつも君が関わってたんだなんて、こんなことで知りたくなかったな。
今ならほんとの私を見せてあげられるから、帰ってきてよ。こんなにぐちゃぐちゃになっちゃった私の事見て笑っていいからさ。私一人じゃ生きていけないんだよ。君が隣にいてはじめて1人で立てるんだよ。
つまらない事が嫌いな私に君がいないと息をすることさえつまらないなんて気付かせた癖に。

8/4/2024, 5:25:08 AM

「目が覚めるまでに」


彼の朝はいつもはやい。低血圧で起きるのに時間がかかる私とは違いアラームの音ひとつでサッと起きて朝の支度を始めるのだと言っていた記憶がある。事実私が起きる頃には部屋の換気や身支度など全て終わらせてニュースを見ていることがほとんどだった。
そんな彼が今は私の隣でぐっすりと眠っている。余程疲れているのか、私が起きる時間になってもぞもぞと動いても起きる気配がまるでない。あまりにも静かに眠り続けるものだから呼吸をしていないのではないかと不安になり口元に手を当て確認したが、その心配自体は不要だったみたいだ。
普段はキリッとしたみんなの頼れる存在である彼だが、眠っている時はいつもより少し幼い顔をしているように思う。髪型のせいもあるかもしれないが、それを見られるのは自分だけなのだとほんの少しの優越感に浸る朝は思ったより悪いものじゃない。
ただ間もなく時刻は昼を回る時間になる。流石の私もお腹が空く時間だし、彼にもやりたいことがあるだろう。なにより彼を起こさないと、がっちりと抱きしめられている私はベッドを出て何かをすることができないのだ。ここまですやすやと心地よさそうに眠る彼を起こすのは心が痛むが致し方ない。

ねぇ、起きて。もうお昼になっちゃうよ。

そう声をかければ普段なら動き出すはずなのに。今日ばかりはダメみたいだった。どうしたものかと見上げれば端正な顔が視界に入る。
そんな顔を見て、こんなに起きないならすこしくらい遊んでもバレないんじゃないか。と私の中で悪戯心がざわつきだす。
いつもは些細ないたずらをするだけで軽いため息をつくようなタイプだが今回ばかりは起きないお前が悪いと責任転嫁してしまえばいい。
そう思ってしまえば話ははやい。何をしようか、どこまでなら怒られないか…最悪起きたとしても言い訳できるものがいい。

ああそうだ、あれにしよう。
ふふ、と笑ってから手を彼の頬へ伸ばし親指で軽く撫でる。いたずらの前に起きられてはたまったものではないが、しようとした瞬間に起きられるよりは確認を入れた方がいい。
幸いにも今日の彼はこれくらいのことでは起きないらしい。
ああ、良かった。と一息つき、さていたずらの開始だと己の顔を近づける。いったいどんな反応をしてくれるのか、それともこれでも起きないのかは分からないが。まぁ私が楽しいからそれでいいのだとしよう。

ちゅ、と軽い音をたてて彼の唇から離れればなんだか悪戯心さえ沈んで虚しい気持ちが大きくなってくる。
朝からなにしてるのかと軽くため息をつき大人しく彼の腕の中へ戻り、もう一度眠りにつこうかと目を瞑った時

…もう満足したのか?

という声が上から聞こえてくるものだからあまりにもびっくりして思い切り上を見上げてしまった。
声をかけてきたのはそっちの癖に急に動いた私にびっくりしたのか、彼も目を見開いて見るからに驚いた顔をしている。
な、え、なんて言葉にならない声を出している私を見ながらまたとろんとした顔をする彼に起こしてしまったことを申し訳なく思う。

つ、かれてた、よね?起こしちゃってごめんね。私は起きるけどまだゆっくり寝てていいよ。お昼はどうする?軽い方がいいのかな。

なんて、あくまで平常心を装うとしながら言葉を紡ぐが彼は抱きしめている腕を離そうとしない。どうしたのかと思えば彼が口を開くのでなにか言うのかと思い静かに彼の声を待つ。だが何も言わずにそのまま口を閉ざしてしまった。