親の転勤の都合で遠くに引っ越すことになった。
君とは会えなくなってしまったけれど、毎日LINEで話しているおかげで疎遠になることはなかった。
なのに、七月に入ったあたりから君からのLINEは途絶えてしまった。
こちらからメッセージを送っても既読すら付かない。
やがて夏休みが始まった。
直接会いに行けば君はどんな反応をするだろうか。
迷惑そうな態度を取られたらその時は、残念だけどそこで君との友情は諦めるつもりだった。
緊張しながら君の家を訪ねると、君のお母さんが快く迎えてくれた。
しかし、君に会いに来た旨を告げると彼女の顔は怪訝なものとなり、
「そんな子はうちにいない」
と、信じがたい言葉を発した。
これは一体どういうことだ──?
君からのLINEが途絶えたあの瞬間から、君という存在が、この世界から消失したとでもいうのか──?
テーマ【君からのLINE】
私から全てを奪った憎き外道に報復する。
それが悲願であり、私の生きる意味だった。
何年もかけて綿密に立てた計画だ。
そこには一分の隙もなければ破綻もないはずだった。
なのに、なぜ露見した。
あの外道を亡き者にしてやるはずが、返り討ちに遭い私が亡き者にされようとは。
なんて笑えない冗談だ。
我が悲願は塵となって消える。
ならばせめてもの抵抗として、命が燃え尽きるその時まで、あの憎き外道を呪うとしよう──
テーマ【命が燃え尽きるまで】
早く夜が明けてほしい。
怖くて指先の震えが止まらない。
夜が明けさえすれば“あれ”はしばらくの間鳴りをひそめるから。
夜が明けたら、仮眠を取ろう。
そのあとは“あれ”を封じる手掛かりを探す。
大丈夫、私は助かる。
そう思った時だ。
禍々しい気配を背後に感じた。
私の身体は縫い止められたように固まる。
視線だけをずらして時刻を確認する。
夜明け前──あと数分で夜が明けるのに……。
嫌だ、私はまだ死にたくない!
テーマ【夜明け前】
それなりに恋はしてきたつもりだ。
けれど、ここまで誰かにのめり込むことはなかった。
この火焔にも似た感情は、本気の恋……とでもいうのだろうか。
だからこそ君を傷つける存在は許せない。
君がずっと笑顔でいられるように、今夜、僕は一人の人間をこの世から消す──
テーマ【本気の恋】
目が覚めるとガリガリと壁に印を刻むのがすっかりルーティンとなってしまった。
そうでもしないと気が狂いそうになるからだ。
いや、自覚していないだけでとうに狂っているのかもしれない。
ここは地下室だろうか?
全く日光が差し込まない小部屋に私は監禁されている。
太陽の光がないせいで時間の感覚が喪失した私には、今が朝なのか昼なのか夜なのかもわからない。
四角い枠の中に印が七個並んだ。一応これで一週間としている。
ガリガリと今度は新しい枠を作るために壁を刻む。これで三つ目の枠になる。
また手製のカレンダーが増えてしまう。
新しいカレンダーが完成するのが先か──私が脱出できるのが先か──
テーマ【カレンダー】