「とりとめもない話」
私はじいちゃんばあちゃんっ子だ。
暇な日はわざわざ電車に乗って会いに行くほど。
別に特別なにかするわけじゃない。
でも、行くだけで喜んでくれる。
存在するだけで喜ばれるって何よりも幸せ。
冬は私とじいちゃんとばあちゃんでコタツに入って
とりとめもない話ばかりする。
何度も聞いたからオチまで全部わかってる話。
それでも毎回わざと初めて聞くかのように聞く。
二人が楽しそうに話してくれることが大事だから、
いつが最期になるかわからないから、
二人から聞いたとりとめもない話を忘れたくないから、
オチまで知ってるとりとめもない話を聞き続ける。
いついつまでも、この時間を忘れないように。
「部屋の片隅で」
部屋はやっぱり四角形がいい。
いや、三角でもいい。
でも、角が多いほうが僕の好み。
ちなみに、丸はダメ。絶対に嫌。断固拒否する。
くだらないって思われるかもしれないけど、
僕にとっては大事なこと。
だって、角がないと困るじゃないか。
隅っこで毛布にくるまって泣きたい日がある。
誰にも泣いてるのを見せたくない。
だから、僕は角のある部屋が好き。
「逆さま」
私はよく逆さまになって考える。
別に倒立しながら考えるわけじゃない。
世界を色んな角度や視点から見ているのだ。
上から見たら、その出来事が正しくても、
下から見たら、実は正しくないかもしれない。
じゃあ、右や左、それ以外の様々な角度から見たら…
逆さまになって色んな角度のことを考える。
いまの視点だけで果たして正確に物事を理解してるか?
そして、正確で間違いのない正論だとしても、
決して振りかざしたりしないこと。
そんなふうに私は生きていきたいと願う。
「眠れないほど」
私は本が大好きな子供だった。
いわゆる本の虫というやつだ。
好みの本が見つかると時間を忘れて夢中になり、
飽きずに同じ本を何度も何度も繰り返し読み込んだ。
新しい物語を読み始めると、途中で止められない質で、
途中で止められると寝付けないほどだった。
主人公はこんなとき、どんなことを言うんだろう?
ラストのその先はどんなかな?
物語のその先にワクワクして、眠れないほど、
本の中の人物、世界、その全てに魅了された。
いつか、私も書きたい。
眠れないほど面白い物語を。
そして最後まで読んで、何かを感じてもらえたら…
願わくば、幸せな気持ちになってもらえたら、なんて。
まだまだ遠い夢の話。
「夢と現実」
思ひつつ寝ればや人の見えつらむ
夢と知りせば 覚めざらましを
高校の授業で習ったこの歌が忘れられない。
当時、後半部分で言われている
「夢と知っていたら目を覚まさなかったのに。」
という、この言葉に私は思いを馳せた。
今も昔も、人は眠れば夢を見るのだと。
目が覚め、それが夢の出来事だったとき。
人は夢に焦がれるもの。
夢という眩しいものに魅せられて、
現実という厳しい世界に寂しさを覚える。
時代が変わり、世界が変化していっても、
人が漠然と抱く寂しさには変わりがないのだと。
そんなことを思いながら、その後の授業中は
頭の中でずっとこの歌を口ずさんでいた。