白燈

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10/12/2024, 3:12:42 PM

放課後


終業の鐘が鳴る。
生徒たちは疎らに帰り始め、やがて教室には、僕一人が残された。沈んでゆく夕陽が、僕の頬を照らす。
誰もいない教室。
なにをするわけでもなく、ぼんやりと窓際の席に座り、外を眺める。通学路からは、帰っていく生徒たちの話し声が聞こえ、遠ざかっていく。
友だちとなにかあったわけでもない。教師に怒られたわけでもない。親と喧嘩をして、家に帰りたくないわけでもなかった。
ただ時折、なんとなしに感傷的な気分になり、一人教室に残っては、ぼんやりとすることがたまにある。
秋の夕暮れ。
肌寒くなってきたせいだろうか。
季節の変化と、時間の流れは、時に人を感傷的にさせる。
酷く寂しいような、悲しいような。
生徒たちで賑やかだった教室に、一人残っては、そんな感傷に浸る放課後。
陽ももう沈みきる。
辺りは暗くなり、更に寒くなるだろう。
僕は席を立ち、鞄を手に取ると、教室を出た。
人気のなくなった校舎は、誰の気配もなく静かで、いつもと変わらないものだった。
家路に着き、いつもと変わらない日常へと、戻っていった。

10/11/2024, 4:43:23 PM

カーテン


月明かりが、射し込んでいた。
ガラス戸は僅かに開いていて、閉じたカーテンは隙間から流れ込む、秋の風に揺れている。
私は肌寒さを覚え、ベッドから這い出ると、手を伸ばし、ガラス戸を閉じた。
真夜中の、秋の日。
私は立ち上がり、ガラス戸越しに月を見上げる。
煌々と光を放つ満月に、心を奪われ、しばし立ち尽くす。
日々の喧騒のなかで、忘れてしまっていた自然への郷愁に、心が澄んでいくを感じた。
明日もまた、街の人々のなかに呑まれていかなければならない。
私はベッドに戻り、横になる。
再び襲う微睡のなか、月の明かりだけが意識の境で澄んだ光を放っていた。

10/9/2024, 5:21:15 AM

束の間の休息

長く苦しい 戦いだった
物語も これで佳境

思い返せば いろいろなことがあった
最後になって思うのは
ようやくこれで 肩の荷が下りる

もしも次があるのなら
もっと穏やかな道のりを

刺激があるのも嫌いじゃないが
安らかな終わりを望んでいた

そうして私は 頁を閉じる

席を立って キッチンへ
珈琲を入れ 束の間の休息
小説を読み終えた後の
これが醍醐味

10/7/2024, 2:41:19 PM

力を込めて

無気力な僕は
毎日をただやり過ごすだけ

一生懸命に生きる人を横目に
交番の前を通るように、なんとなく目を伏せる

耐えていれば 我慢さえしていれば
過ぎ去ってくれるのだと信じて

なにもなし得ない自分とか
いつの間にか有名になった誰かとか

そんなものに負い目を感じては
耐えて 我慢して 息を殺す

そうしてやり過ごす
僕のポケットの中の右手には
力が込もって 指先が白く色を変えていた