#私の当たり前
私にとって、誰かに暴言を吐かれることは当たり前。
幼い頃からそうだった。
親兄弟に友達もどき、先生に先輩、後輩。
毎日毎日心無い言葉を投げつけられて悲しかった、苦しかった、辛かった。
そして私は自分の心を守るために、心を動かさなくなった。
何を言われても無表情。そうしたらもっと心無い言葉を吐かれたけれど、私は何も感じない。
感じない、はずだった。
貴方に出逢うまでは。
貴方が私の心を溶かしたから、溶かしてしまったから、また私は心が動くようになった。
それと同時に心の柔らかいところに、暴言という矢が何本も突き刺さってくる。
だけど、貴方がそんな矢を抜いて、手当をしてくれるから、また笑えるようになったの。
心無い言葉は今でも嫌い。痛くて痛くて堪らない。
だけど貴方が横に居てくれるなら、そんな痛みにも耐えられる。
だから、私から離れて行かないでね。
そう言った彼女の瞳は暗く淀んでいた。
#街の明かり
午前2時
この時間になると街の明かりは、住宅街でまだらに点いている光か、道にぽつりぽつりと立つ街頭、はたまた24時間営業の店や自動販売機。
この時間はなんだかワクワクする。
子供の頃には出来なかった、深夜に外に出るという行為。
それを大人になった今なら存分に味わえる。
さぁ、今日はどこへ向かおうか。
#七夕
今年も天気は曇り。
毎年毎年、七夕の日は曇ってばかり。
天の川なんてもう何年、いや何十年と見ていないかもしれない。
まあ、今日の主役2人は1年に1度しか会えないのだから、今日くらいは我慢しようか。
今日という日もあと僅か。
最後まで楽しめよ、織姫と彦星。
#友達の思い出
小さい頃に離れ離れになった友達がいた。
彼女のお父さんの転勤だった気がする。
彼女が居なくなる時にお家にお呼ばれして、お別れ会をした。
何人かのその子と仲良くしてた子達と私。
小規模のお別れ会。
寂しくて最後は泣いてしまった記憶。
お別れ会が終わり、他の子達が全員帰ったあと、私も帰ろうとした時彼女のお母さんに呼び止められた。
「〇〇、アレ渡さなくていいの?」
なんのこっちゃと思っていたら、涙で顔をぐしゃぐしゃにした彼女が何かの包みを持ってきた。
「さきちゃん、なかよくしてくれて、ありがと!だいすき!わたしのこと、わすれないでね。」
そう言って渡された包の中には可愛らしい絵が描かれた陶器製のコップが入っていた。
「もちろん!〇〇ちゃんもわたしのことわすれないでね?」
私と彼女はまた泣いて、そして最後に笑いあった。
またいつか、会える日まで。
そう約束した。
その後、20年程経ったが、彼女と再会出来てはいない。それに、彼女にもらったコップは兄に割られた。
悲しくて沢山泣いた。友達に貰ったものだったのに、と。泣いて、泣いて、泣いて。
未だにその事は許していない。
それでもまだ、私は信じている。
いつかまた、彼女と再会出来る日が来るということを。
#星空
下を向いて適当に歩いていたのに、目の端には星空が映る。
何故だろう、と横を向くと自分が歩いていたのは、川に架かる橋の上で、水面に星空が反射していた。
キラキラと輝く星空は風によって揺蕩っていて、ここに飛び込めたらどれだけ楽しいだろうか。
そう思った瞬間、私は橋の上から身を乗り出して、下の星空に飛び込んでいた。
ドボン
ゴポゴポ、ゴポゴポ
川の水はいきなり牙を剥き、私を水底へと引き摺り込む。
抵抗もできず、私はただ引き摺り込まれる。
目を開くと、遙か上空の星空がキラキラと輝いて、私は手を伸ばす。
それすらも意味は無く、私はそのまま意識を手放した。