ユウキ

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1/2/2025, 1:56:37 AM

新しい年が始まる。

光線が目に飛び込んで思わず目を閉じた。
そうしてまた目を開いて、目を細める。
いつだって太陽は変わらない。
いつも通りの周期をなぞっている。
それでも何か違う気がするのは、単純だけど見ている人の心のせいなんだろう。

12/25/2024, 3:31:55 PM

クリスマスだからって何も変わらないよ。
うん、何変わらない。
いつも通り明日が来て、今日になって。昨日になっていくだけさ。

そうだね、変わらないでいてほしいよ。
いつも通りの中に、いつも通りのアナタがいてくれますように。

2024.12.26 「クリスマスの過ごし方」

12/23/2024, 3:23:47 PM

ヨウヘイは今年で42歳になった。
そんな歳になったというのに、どうしても手放せない物がある。
子供の頃にプレゼントで買ってもらったトリケラトプスのぬいぐるみだ。
小学生の時に大好きだった恐竜の展示会に連れて行ってもらった。その時目にしたぬいぐるみがどうしても欲しくて、泣いて叫んで駄々を捏ねて買ってもらった記憶がある。
大きくなって、我ながらクソガキだったな、と思ってしまう程、あの時はどうしても欲しかったのだ。

あれから時間が経って、当時持っていた、大切だったものなんて捨ててしまったのに、このぬいぐるみだけは手放せないでいる。
自分でも気持ち悪いと分かっている。良い歳をした、結婚もしていない、中年のおっさんが、こんなものを後生大事な持っているなんて。
誰にも言えない秘密だった。

「落としましたよ。」
そう誰かにバレれば白い眼で見られ、悪態を吐かれる事であるのは分かっていた。
なのにバレた。
そう、今まさに目の前にいる、女性に。まだ若いだろう20代、いやもしかしたら10代、高校生かも。
ほんの出来心だったのだ。
昨今ぬいぐるみと一緒に写真を撮るという行為がある、というのを聞いて己もしてみたいだなんてトチ狂った考えを持ったのがいけなかったのだ。
綺麗に咲いた桜と一緒にトリケラトプスを撮りたいだなんて考えのは一体誰だ。自分だ。
「いや…。」
「えっ、今カバンから落としましたよね?」
完全に見られていた。
「あっ、すみません。」
顔から火が出そうだ。恥ずかしくて顔をまともに見ずに、差し出されたぬいぐるみを受け取った。
「いえ、気がつけて良かったです。」
「…ありがとう。」
お礼を伝えて、直ぐ立ち去ろうとした。
「良いですよね。トリケラトプス。私も好きです。」
「はい?」
「すみません、急に変な事言って。でもそのトリケラトプス、私も持ってるんです。」
「…大分古いものだから違うんじゃないでしょうか?」
「あ、私のは父から貰ったものなので、貰った時から大分くたびれてました。」
「そうですか…。」
「私のより凄く綺麗だったから、凄く大事にされてて良いなって思ってつい話しかけてしまいました。すみませんでした。」
女性は慌てたようにそう言って、失礼します、と背を向けた。

2024.12.24 「プレゼント」

12/23/2024, 3:59:53 AM

子供の頃、冬場に柚子をお風呂に入れていた記憶がある。
半分に切った柚子をネットに入れて、凄くそれが良い匂いだっまのを覚えている。
ネットに入った柚子をお風呂の中に沈めて、握って、お互いに投げ合って、風呂でのおもちゃにしていた。
あの頃はお風呂が楽しくて、一種の遊び場の様に思っていた。

大人になって、忘年会で出会った柚子の香りにそんな事をふと思いだした。

2024.12.22「柚子の香り」

12/22/2024, 2:49:02 AM

大空には無数の星がある。
きっと今見えているものは、それのほんの少ししかないんだろう。
そんなどうでもいい事を考えながら、星を数える。
ひとつ、ふたつ、みっつ。
だんだん途中でわからなくなって、もう一度数え直す。
そんなどうでもいい事をしていないと、自分が自分で無くなりそうな気がした。
「ここにいたんだ。」
何度そんな事を繰り返したか分からないけれど、後ろから聞き慣れた声がした。
振り返ると少し息を切らした君がいた。首に巻いたマフラーが寄れて肩からズリ落ちそうだ。
「よく分かったね?」
「何かあったらいっつもここに来るじゃない。」
君は笑って、手袋に包まれた手を差し出した。
今まで何度も掴んできた、その手を見た。
「帰ろう。」
きっと君は何度でも私に手を差し出してくれるんだろう。

2024.12.22 「大空」

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