冬の足音が聴こえた。
振り返ると、しんと静まり返った街。そこに、突然冷たくなった空気だけが漂っている。
北風が頬を撫でる。
体が芯から冷えていく。風邪を引きそうだなと、鼻をすすった。
『冬の足音』
最近彼女が冷たい気がする。たぶん冬のせいだろう。
今日はそんな彼女の誕生日。
これを機にもっとアツアツの仲になるぞ!
そう意気込んで、彼女の喜ぶ贈り物を考える。
冷たいとは言っても、彼女は俺のことが大好きだってわかっている。だから、喜ぶものはこれしかない。
彼女が帰ってきた。
プレゼントボックスに見立てた部屋の、豪華に飾り付けた扉がゆっくり開かれる。
「ハッピーバースデー! プレゼントの中身は俺だよ!」
自分自身もリボンで飾り立てた。最高のプレゼントだろう?
そうして、彼女に抱き着こうとした。
「テメーの中身ぶちまけてやろうか」
――そう言われ、プレゼントの中身は捨てられた。
『贈り物の中身』
北の国の夜空は美しく澄んでいた。街の灯り一つもなく、空にある月や星達だけが頼りだ。
この完全な美しさは、北の国の神様すら羨んだのかもしれない。そのまま氷の檻に閉じ込めてしまいたいと、そう願ったのだろうか。
優しく煌めく星空とは裏腹に、ここはとても寒い。
雪原の上に横たわり、星空を見上げる。
この世界には魔物が蔓延っていた。
その源が北の国にあると知り、仲間達と共にここへやって来た。
先程まで激しい争いが行なわれていたとは思えないほど、今は静寂に包まれている。
「あいつらは、上手くやったかな……」
仲間達の半分は、別の場所へと赴いていた。
大元を断つ為、もっと根本的な出処へ。魔界と呼ばれるその場所へ。
みんなで一緒に行ければそれが一番良かったが、今の最善はそれぞれが役目を全うすることだった。
雪の上を駆ける風は一層寒さを強め、彼らの体を凍えさせる。
赤く染まる雪原さえ、何事もなかったと、星空と共に静寂の底へ閉じ込めていく。
その運命に抗うかのように、一筋の光が空から流れた。
『凍てつく星空』
『スマホのアラームが鳴った。朝だ。』
『スマホを手に取った私は、画面に表示された「知らない番号」からの着信に、一瞬だけ心臓が跳ねた。』
『電話は深夜にかかってきている。誰からだろうか? 私はとりあえずその番号を検索にかけてみた。』
『――調べた番号は、私の知らない地方のものだった。』
『いつもだったら当然無視している。しかし、なぜたろう。この時は折り返してみようという気持ちになった。』
『電話はすぐに切れた。けれど、耳の奥に、微かな「助けて」の声が残っていたような気がした。』
「えぇ~……?」
君とリレー小説をしている。交代で物語を書いていくあれだ。
君から返ってきた小説の続きに私は頭を悩ませる。
知らない人からのSOS?
どう返したらいいだろうか? まぁここはとりあえず……。
『驚いて、再度電話をかけてみる。しかし、今度は繋がらない。電源が切られてしまっている。』
すぐさま返ってきた。
どれどれ……。
『画面を見つめながら、私はふと思った。――「あの声、聞き覚えがある」ような気がしてならなかった。』
えぇー?
知ってる声なの? どうしたもんかなぁ。
悩みに悩んで、それでも君と物語を紡いでいく。
放課後の教室。楽しそうに笑う君。
どんな物語が完成するかは私達にもまだわからない――。
『君と紡ぐ物語』
ビジュイイじゃん?
そうだね。ナウいね。チョベリグって感じ~。
ん? 古いって……死語だって言いたいの?
そんなバナナ。
じゃあ、すきぴのビジュイイじゃん。とか? そんな感じ?
え、すきぴすら今はもう死語だって!?
つーか、死語って言葉自体が死語だって!?
ギャフン。
『失われた響き』