川柳えむ

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 北の国の夜空は美しく澄んでいた。街の灯り一つもなく、空にある月や星達だけが頼りだ。
 この完全な美しさは、北の国の神様すら羨んだのかもしれない。そのまま氷の檻に閉じ込めてしまいたいと、そう願ったのだろうか。
 優しく煌めく星空とは裏腹に、ここはとても寒い。
 雪原の上に横たわり、星空を見上げる。

 この世界には魔物が蔓延っていた。
 その源が北の国にあると知り、仲間達と共にここへやって来た。
 先程まで激しい争いが行なわれていたとは思えないほど、今は静寂に包まれている。

「あいつらは、上手くやったかな……」

 仲間達の半分は、別の場所へと赴いていた。
 大元を断つ為、もっと根本的な出処へ。魔界と呼ばれるその場所へ。
 みんなで一緒に行ければそれが一番良かったが、今の最善はそれぞれが役目を全うすることだった。

 雪の上を駆ける風は一層寒さを強め、彼らの体を凍えさせる。
 赤く染まる雪原さえ、何事もなかったと、星空と共に静寂の底へ閉じ込めていく。
 その運命に抗うかのように、一筋の光が空から流れた。


『凍てつく星空』

12/1/2025, 11:36:04 PM