『スマホのアラームが鳴った。朝だ。』
『スマホを手に取った私は、画面に表示された「知らない番号」からの着信に、一瞬だけ心臓が跳ねた。』
『電話は深夜にかかってきている。誰からだろうか? 私はとりあえずその番号を検索にかけてみた。』
『――調べた番号は、私の知らない地方のものだった。』
『いつもだったら当然無視している。しかし、なぜたろう。この時は折り返してみようという気持ちになった。』
『電話はすぐに切れた。けれど、耳の奥に、微かな「助けて」の声が残っていたような気がした。』
「えぇ~……?」
君とリレー小説をしている。交代で物語を書いていくあれだ。
君から返ってきた小説の続きに私は頭を悩ませる。
知らない人からのSOS?
どう返したらいいだろうか? まぁここはとりあえず……。
『驚いて、再度電話をかけてみる。しかし、今度は繋がらない。電源が切られてしまっている。』
すぐさま返ってきた。
どれどれ……。
『画面を見つめながら、私はふと思った。――「あの声、聞き覚えがある」ような気がしてならなかった。』
えぇー?
知ってる声なの? どうしたもんかなぁ。
悩みに悩んで、それでも君と物語を紡いでいく。
放課後の教室。楽しそうに笑う君。
どんな物語が完成するかは私達にもまだわからない――。
『君と紡ぐ物語』
ビジュイイじゃん?
そうだね。ナウいね。チョベリグって感じ~。
ん? 古いって……死語だって言いたいの?
そんなバナナ。
じゃあ、すきぴのビジュイイじゃん。とか? そんな感じ?
え、すきぴすら今はもう死語だって!?
つーか、死語って言葉自体が死語だって!?
ギャフン。
『失われた響き』
寒さで目が覚めた。
頭まで毛布を被って、そこから出たくない。けど、そういうわけにもいかない。
毛布を纏ったまま、ずるずると窓の外を覗く。
庭には霜が降りていた。
窓を開けると冷たい空気が流れ込んできて、一瞬で頭がクリアになる。
吐き出す息は視界を白く染め上げる。
テレビをつければクリスマスの話題が上っている。
もう冬だなぁ。
『霜降る朝』
なんか息苦しくて、目も回る。まるで海の中にいるように、上手く呼吸ができなくて、溺れそう。
必死に肩で息をしていたら、君が「大丈夫?」って訊いてきた。
それだけで、呼吸ができた。
海から引っ張り上げられたように、空気が戻ってきた。君が助けてくれたんだ。
深呼吸をする。視界がはっきりしてくる。
心にも、新しい空気が取り込まれたように、スッキリとしていた。
『心の深呼吸』
ある朝、目が覚めたら、小指の先に赤い糸が繋がっているのが見えた。
これは運命の人と繋がっているというあの赤い糸なのだろうか。
糸を手繰って外へ出てみる。
いろんな人の小指の先に、誰かとの赤い糸が括り付けられていた。
赤い糸で結ばれて幸せそうな人、赤い糸の先がすぐ傍にあるのに気付いていない人、二人並んで楽しそうにしているのにそれぞれ別の赤い糸が結ばれている人、赤い糸の先が切れてしまっている人……。
私の赤い糸の先には誰がいるのだろうか?
ドキドキしながら向かうと、なんと糸の先は異空間に繋がっていた。絵の具のパレットを無理やりかき混ぜたような混沌とした色彩の渦が宙に浮かんでおり、そこに糸が飲み込まれている。
こんな非現実的なことがあるだろうか?
しかし、赤い糸が見えている時点で非現実的なので、もうそんなことは気にせず渦に入っていくことにした。
渦の先は、未来だった。少し先の未来。
そこに、彼はいた。お互いに、一目見てわかった。この人が運命の人だと。
こうして私はしばらく未来にいた。
彼は私を心配してくれた。帰らなくていいのかと。でも、帰ってしまったら、再び彼に会えるかどうかわからない。それに、帰り方もわからない。
そうこうしているうちに、世界に危機が訪れた。致死率の高い未知の病原菌が流行したのだ。
そのタイミングで、あの異空間へ繋がる渦が現れた。これに入れば過去に戻れるかもしれない。
私は彼に一緒に行こうと言った。しかし、彼は行けないと言う。病気に感染してしまった。だから、一緒に行くことはできない。君はこうなる前に早く逃げてくれと。
泣きながら未来を後にする。戻ってくると、赤い糸は見えなくなっていた。
それでも私は待っている。きっとまだ繋がっている、あの人と再び逢える日を。
『時を繋ぐ糸』