川柳えむ

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8/3/2025, 2:21:14 AM

 ボトルメール。
 瓶に詰められ、川や海に流された手紙のことだ。
 実際にやったことはない。その辺のゴミになってしまうかもしれないから。
 でも、ボトルメールを体験する方法があった。
 そういうサイトやアプリが存在していたから。

『ボトルメールやろうぜ』

 ネット上の掲示板を漁っていたら、そんな投稿を見つけた。サイトへのリンクも貼ってある。
 面白そうだと思い、試してみる。
 画面上には現実には存在しない海と砂浜が表示されている。
 しばらく待っていると、その砂浜に瓶が打ち上げられた。
 瓶を開き、中の手紙を広げる。
 英語で何かが書いてある。英語は不得意なので、よくわからない。
 それでも、なんだか胸が躍った。地球上の知らない誰かと、いつ送られたかもわからない手紙を通じて繋がれた。
 自分も手紙を書いて、瓶に詰めて流してみる。

『こんにちは。こちらは日本です。元気ですか?』

 そんなしょうもないことを書いて。
 また次の手紙が流れてきた。そこには、同じ掲示板を見たであろう人の、ふざけた文章があった。
 これはこれで面白かった。あー同じの見て始めたんだなって。きっと他の国の人には迷惑だっただろうけど。

 それから、たまにそのサイトを開くようになった。
 誰に届くかわからない。返事だって来るわけじゃない。
 それでも、たくさんの人が、誰か特定の人に宛てたでもない手紙を読むのが、そして自分も、わからない誰かに向けて書くのが、楽しかった。

 それから時が経ち、そのサイトの存在も忘れた頃、あるアプリが流行った。舞台が海ではなかったものの、そのシステムはまさしくボトルメールだった。
 楽しくなって、またいろいろな手紙を発信した。
 誰かに届いたのかもわからないが、それでも楽しかった。
 たまに、SNSにアプリのスクリーンショットを載せている人もいたから、誰か載せてないかな。なんて期待して検索してみたりして。

 また時が経ち、ふとそのアプリの存在を思い出した。スマートフォンを変えるのに、引継ぎができなかった為、そのタイミングでやめてしまっていた。
 急にやりたくなって、アプリを探した。見つからない。
 調べてみると、どうやらサービスが終了してしまったようだ。そうか。それはもうどうしようもない。仕方がない。
 じゃあ、あのサイトはどうかな?
 ボトルメールを始めるきっかけになった、あのサイト。サイトの名前も思い出せないけど。
 でも、掲示板のことは覚えている。
 投稿を検索すると、アーカイブが出てきた。そこに貼ってあるリンクをクリックしてみる。
 ――サイトには、繋がらなかった。
 もう存在していなかった。
 それはそうだ。あれから何年経ったと思っている。その後に出たアプリすら終わっているんだ。当たり前だ。もう、ない。

 今はSNSが普及しているから、そもそも必要がないのかもしれない。
 だとしても、あの時の、誰と繋がれるかわからないワクワク感が、自分のことを知らない誰かに届けるドキドキ感が、すごく良かったんだ。

 私が、みんなが、あの海に流したボトルメールは、波にさらわれ、そのまま消えてしまった。

 それでも、あの海と砂浜が、私の心に残っている。
 存在しないあの景色にまた出会えないかと、今もまだ探している。


『波にさらわれた手紙』

8/2/2025, 7:22:38 AM

 夜空を彩る花火が美しい季節です。いかがお過ごしでしょうか。
 花火を見ると、二人で行ったあのお祭りを思い出します。あの夏。色鮮やかに染まった夜空。あなたの横顔……。

 あの頃の私達は、まだ幼くて、きっと思いやる気持ちが足りてなかった。自分のことしか考えられなかった。そうして、お互い傷付けあっていた。
 あれからもう何年も過ぎて、ようやく周りが見えるくらいの余裕がでてきたように思えます。
 あの時、傷付けて、ごめんなさい。
 あなたも傷付いて、私も傷付いて。だから関係を終わらせたけど。
 今でもあなたを思い出す。
 できるなら、八月のあのお祭りで、また会いたい。二人で花火を見たい。あの時二人の関係が始まったように、また始めたい。

 だからもし、良かったら、一緒にまたお祭りへ行きませんか?

 まだまだ猛暑が続きます。どうかお身体を大切にお過ごしください。
 もし会えたその時は、また笑い合いましょう。


『8月、君に会いたい』

7/31/2025, 10:35:54 PM

 眩しくて目を細める。
 強い陽射しの下、笑う君。
 ずっと見ていると、目が潰れてしまいそうだ。
 触れてはいけない神の領域のような、そんな神聖さを感じて。
 きっと赦されない想いだ。
 伸ばしかけた手を、ゆっくりと戻す。
 強い光の前で、闇はきっと存在できないから。
 今、君の傍にいられるだけでも、幸せだ。
 限りある時間を、最期まで君と共に。


『眩しくて』

7/30/2025, 10:56:54 PM

 ――死ぬのかな、と。ぼんやり考えていた。
 意識が遠退いていくのがわかる。
 君の切羽詰まった声が聞こえる。
「絶対に死なせない!」
 ――もういいだろ。うん。大丈夫。ちょっと休むだけだから。

 そういえば、君は「会いたかった」って言ってた。あれは、どういう意味だった?
 たしかに。なんだか久しぶりに会った気がするのに、ごめん。
 でも、会えて嬉しかったな。なんでかわからないけど。

 唇に熱いものが触れた。
 止まりかけていた心臓が、再び熱く鼓動する。
 瞼を開くと、目の前に初めて見る君の泣き顔があった。


『熱い鼓動』

7/30/2025, 6:15:00 AM

 知ってる人に話し掛けられた。
 一方的に話してくる。
 挨拶をし損ねてしまった。
「あっ……え……」
 挨拶しなきゃ。
「こ、こんにちは!」
「え、急にどした? それよりさ――」
 またどんどん話していく。
 どうだろう? 僕は何か間違えた?
 でも、何もなかったように話していくから、たぶん大丈夫。

 タイミング、間違ったかな? って、いつも後で思ったりする。
 たまに間違って、相手がどこか行ってしまう。そんなこともある。
 それでも、君はいつも気にせず話してくれるから。ただの知ってる人じゃなくて――なんか、そう。一緒にいて、ちょっと楽しい知ってる人。
 君と会える日が楽しいって思ってる。


『タイミング』

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