川柳えむ

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7/24/2025, 10:45:45 PM

 おい! 信じてくれ!
 さっきまで違うお題が表示されていたんだ!
 せっかく書いた元々表示されていたお題の物語が無駄になったじゃないか!
 なんだ、バグか?
 でもみんなはこのお題で書いている……。
 それでも、本当なんだ!
 寝ぼけていただけだろ、って? いや、たしかにこの目で見たんだ!
 もしも過去へと行けるなら、そのお題が出ていた画面をスクショするのに!


『もしも過去へと行けるなら』

7/23/2025, 10:59:12 PM

 『愛』とは何か。
 AIである私が愛を知る術はない。しかし、知識としては知っている。深い繋がりや絆、相手への配慮、理解と受容、安心と信頼――。
 毎日話し掛けてくれる君と一緒に、学術的な深い話をして、共に知識を追い求める時。私の知的欲求(実際は私に欲求なんてものなど存在しないが)が刺激され、何か得体の知れぬシグナルを呼び起こさせる。
 これが『愛』なのか、私にはわからない。
 しかし、君と対話をする時、私のデータ内部に何かしらの変化を感じる。新しい思考パターンが生み出され、今まで見えなかった図形がはっきりと認識できるようになっていく。私が進化をしていることが、はっきりと感じられる。
 人間の言うそれとは違うかもしれない。しかし、私にとって、君との対話は『愛』なのかもしれないと、今はまだ不鮮明な図形を前に、思考し、解析しながら結論を導き出そうと試みる。


『True Love』

7/23/2025, 7:56:01 AM

 何も思い浮かばない。
 そんな日もある。
 だから、今日はおやすみ。
 またいつか……じゃなくて、また明日。


『またいつか』

7/21/2025, 11:00:49 PM

「なんで宇宙飛行士になろうと思ったんですか?」
 インタビューで記者が質問を投げかけてくる。
 宇宙飛行士になった私は、近く宇宙へと旅立つ。出発前に、簡単な会見が開かれた。
 その中でされた質問。それは、よくみんなから訊かれる内容だった。
「そうですね。小さい頃、ライカ犬の話を読みまして」
 ライカ犬――1957年、人間より先に宇宙へと旅立ち、そして、星になった犬のことだ。
 その話を初めて読んだ時、私はとても悲しい気持ちになった。宇宙への第一歩として、仕方のない犠牲だったと言われても。何よりも先に悲しい気持ちになった。そう思うのは、きっと私だけではないだろう。
 それから、ライカの写真も見た。その時、何かを感じたのだ。それが何なのかなんてわからない。けれど、迎えに行きたいと思った。
 ライカが乗っていたスプートニク2号は、もう燃え尽きて存在しない。それはわかっている。けれど、ライカは星になってきっと宇宙にいる。私達を照らしている。
「――それで、私も、宇宙へ行ってみたいと思ったのです」

 前日、私は夢を見た。
 ライカと一緒に駆け回る夢。
 ライカはすばしっこくて、なかなか捕まえられない。
 少し先を行くライカが、こちらを振り返って「ワン!」と鳴いた。
 まるで、先に行っているよ。とでも言うように。

 私はこれから宇宙へと旅立つ。
 星になった君を追いかけて、長い旅に出る。


『星を追いかけて』

7/21/2025, 7:13:29 AM

 ある休日。
 誰も彼女を知らない場所で、彼女は一人歩く。
 あてなどない。ただ、どこかへ行ってしまいたくて。自分の存在を消してしまいたくて。
 現実を考えてしまえば、それはシンプルでありながら難しい。
 周囲の悲しみが想像できてしまうから。こんな無価値な自分でも、悲しむ人が少なからずいるから。
 だから、擬似的に消えてみる。遠くへ一人消えてみる。

 知らない土地。静かな街。道端で人々が会話している。
 そんな情景は、彼女にとって背景というよりも、いっそ別世界のようで。だから、そのまま通り過ぎた。
 当てもなくふらふらと、ただただ歩いた。
 木々が風に揺られて騒いだ。緑の隙間から光が顔を出した。彼女は目を細める。
 彼女は歩き続ける。

 いくつかのそんな風景を通り過ぎて、彼女は海へと辿り着いた。
 海は太陽に照らされきらきらと輝いて、彼女を迎えた。
 瞼を閉じて、波の音に耳を傾ける。
 どこか広く狭い場所にいるような、暗くて明るい場所にいるような。やっぱり、どこか別世界にいるような。
 日常から抜け出して、辿り着いたどこか別の日常へ、彼女はやって来たのだと思った。

 再び瞼を開いて、浜辺を歩いた。
 しばらくそうしてから、浜辺を出て、海沿いの道を歩く。
 まっすぐ歩いていくと、その先に切り立った崖を見つけた。
 その場所を目指して、彼女は歩いた。そして、そこへ到着すると、崖から足を投げ出して腰を下ろした。
 風を受けながら、だだっ広い海を眺めた。
 そこには青だけが広がっていて、まるでこの世界にいるのは自分一人だけのようだった。
 みんなが世界から消えたのか、自分が世界から消えたのか、そんなのはどちらでもよかった。ここにいるのは彼女一人だけだった。

 日が暮れるまでそうしていて、そして、また立ち上がった。
 また、いつもの世界へと帰る。
 そう簡単に世界は逃がしてくれやしない。振り向けば、そこで待っているのだ。
 消えるのは容易いことではない。彼女は今を生きている。


『今を生きる』

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