「なんで宇宙飛行士になろうと思ったんですか?」
インタビューで記者が質問を投げかけてくる。
宇宙飛行士になった私は、近く宇宙へと旅立つ。出発前に、簡単な会見が開かれた。
その中でされた質問。それは、よくみんなから訊かれる内容だった。
「そうですね。小さい頃、ライカ犬の話を読みまして」
ライカ犬――1957年、人間より先に宇宙へと旅立ち、そして、星になった犬のことだ。
その話を初めて読んだ時、私はとても悲しい気持ちになった。宇宙への第一歩として、仕方のない犠牲だったと言われても。何よりも先に悲しい気持ちになった。そう思うのは、きっと私だけではないだろう。
それから、ライカの写真も見た。その時、何かを感じたのだ。それが何なのかなんてわからない。けれど、迎えに行きたいと思った。
ライカが乗っていたスプートニク2号は、もう燃え尽きて存在しない。それはわかっている。けれど、ライカは星になってきっと宇宙にいる。私達を照らしている。
「――それで、私も、宇宙へ行ってみたいと思ったのです」
前日、私は夢を見た。
ライカと一緒に駆け回る夢。
ライカはすばしっこくて、なかなか捕まえられない。
少し先を行くライカが、こちらを振り返って「ワン!」と鳴いた。
まるで、先に行っているよ。とでも言うように。
私はこれから宇宙へと旅立つ。
星になった君を追いかけて、長い旅に出る。
『星を追いかけて』
7/21/2025, 11:00:49 PM