川柳えむ

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6/30/2025, 10:25:41 PM

 重い瞼を開けて、スマホのアラームを止める。
 日課でスマホを確認して、それからゆっくり起き上がり、カーテンを開いた。
 空に昇ったばかりの太陽を睨みながら、先程見たスマホの画面を思い出していた。
 日課の、お題が出るあの投稿アプリの、今日のお題――『カーテン』。
 前にやったな……同じお題を。
 あの時はなんか青春な物語書いたなー。また同じかー。元々過去に一度出たお題の時は書かないでいようかと思ってたんだけど、この間一度やったことに気付かずに書いちゃったしなー。また書こうかなー。

 ……そして、気付いたらこんなものができてました。
 さて、今日も出勤だ。
 スマホを置いて、頭を切り替えた。


『カーテン』

6/29/2025, 10:58:22 PM

 この世界には魔物が生息している。
 少女は、魔物との戦いの際に発生した洪水に飲み込まれ流され、気が付けば知らない土地にいた。
 親切な女性に拾われたが、この場所も、自分の家もわからない。笑うことはできたけれど、不安に泣いた夜もあった。
 帰れないけれど、不自由はない。困ることも、別段ない。それでも、本当の家が恋しくなる時もある。ただ、今の家も大好きだった。
 どうしたらいいのか、わからなかった。

 気付けば、いくつもの季節が過ぎていた。
 幼かった少女も、いくつか歳を重ねていた。

 あぁ、いい天気だなぁ……。
 青い空の下に一人、森の中にある拓けた空間に寝そべる。
 まるで、あの時のように。青く深く広がる世界にたった一人。
 手を伸ばしても、手を伸ばしても、届かない。

 少女を救うために伸ばされた手があった。
 少女も必死に伸ばし返した。
 けれど、その手に届くことはなくて。その手の主と会うことは、それ以来なかった。

 少女は立ち上がって矢を放った。矢は、木の幹の狙った場所へと見事に突き刺さった。
 今の家に住まわせてもらうお礼として、少女はいつからか弓を習い、この町へと侵入する魔物を退治していた。それが、少女の恩返しであり、ここに住み続けている口実でもあった。
 こんなことをしているよりも、本当の家を捜す旅に出るべきなのかもしれない。
 けれど、もし、帰っても逆に迷惑だったとしたら? それよりも、私のことなんてもう忘れていたら?
 ――どうしても、踏み出す勇気はなかった。

 あの時、もしも、手が届いていたならば――。
 今頃、変わらず普通にあの町で暮らして、友達とも笑って過ごして、こんなことを思うことだってなくて……。

 少女はもう一度矢を放った。今度は、あの空へと向かって。
 矢は高く高く、まっすぐ空へと飛んでいく。そして、だんだんとその速度を落とし、今度は地面へと軌道を変える。
「危なっ……!」
 矢は少女のすぐ近くへと落下した。

 ほら、届かない。
 これだけ勢いのある矢だって、あの空の向こうへまでは届かない。
 いくら伸ばしたって、あの手は掴めない。
 青く深い世界は、抜け出せない。

 手を伸ばし、空を睨む。
 それでも、いつか――届くだろうか?

 いつか、伸ばされた手の主と再会し、そして、再び伸ばした手を掴んでくれる人が現れるのは、もう少し先のお話――。


『青く深く』

6/29/2025, 1:04:19 AM

 夏の気配――というか、もう夏だよ。
 これが夏じゃなかったらどうなってしまうの。
 今こんなに暑いなら、8月とか余裕で40℃超えちゃうでしょ、こんなの。
 このままいくと、12月には50℃になってるかもしれない。もう終わりだ。


『夏の気配』

6/27/2025, 10:44:06 PM

 まだ見ぬ世界?
 毎日がまだ見ぬ世界だって。同じ日なんてないんだから。

 …………嘘。

 代わり映えのしない毎日。つまらない。
 ただストレスに耐えて耐えて、もがきながら日々を生きている。

 誰か私を連れ出して。
 まだ見ぬ世界へ。


『まだ見ぬ世界へ!』

6/26/2025, 10:57:52 PM

 君の声を最後に聞いたのはいつだったか。

 君から手紙が届いた。
 シンプルな便箋には、シンプルに「さよなら」と一言だけ書かれていた。

 連絡を取らなくなって、いつの間にか自然消滅していた。
 実際、君の愚痴を聞き続けるのも辛くなっていたし、仕方ないと思う。

 それにしても、今になって急にこんな手紙が届いたことが不安になり、君の住んでいたマンションへとやって来た。
 部屋はもうもぬけの殻で、どこへ行ってしまったのかもわからなかった。
 そこで、もう二度と会えないんだと、悟った。
 それならば、もう少し話せば良かった。もう少し君の話に耳を傾けていれば良かった。君の笑う顔が好きだったのに。

 その日、夢を見た。
 最後に君に会った日の夢だった。
 君の話にも疲れて、「帰る」と言って立ち上がった。
 そんな僕を掴んできた君の手を振り払った。
 君は悲しそうに笑った。
「    」

 あの時、何を言っていたっけ?
 朝の光で目を覚ます。
 それが煩わしくて、カーテンを隙間なく閉め直した。
 もう一度眠れば、また君に会えるだろうか。
 でも、さっきの夢の、思い出せない言葉のように。きっとこうして君のことを忘れていくのだろう。


『最後の声』

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