君がいないと苦しい。
君は僕にとって酸素のようで、傍にいないと息ができない。
だから、どうか、ずっと傍にいて。
・・・・・・
今日もまた一つ。短いながらも物語が生まれた。
こんな私にとって、創作とは、そう、まるで酸素のようだ。生きるのに必要不可欠。
普通の日常を送るだけでは、息ができない。
そうして私は今日も物語を綴っている。
『酸素』
意識を失った瞬間は覚えていない。
気付いたら、この膨大な記憶の海の中を泳いでいた。
なんとなくわかった。これが走馬灯だと。
流れる映像はどんどん古く遡っていく。
でも、映る景色はどれもこれもしょうもない、価値のないものしかなかった。
あぁ、自分の人生こんなもんか。
死んで良かったのかも、悪かったのかもわからない。これから先、生きていようが、死のうが、どちらにせよしょうもないことしかない気がする。
記憶を遡り続け、とうとうこの人生の始まりまで辿り着いた。
そこに、記憶の海に埋もれていた、自分が誕生した時の親の嬉しそうな表情が映り、その瞬間、初めて後悔をしたのだ。
『記憶の海』
ただ君だけがいればいい。
つまらないと思っていた人生に、君という彩りが添えられて、世界はそれだけで輝いていた。
瞳に映る全ての物が、初めてこんなに鮮やかに映ったんだ。
その中心で、君は何よりも輝いていた。
君が傍にいる時間も、姿が見えない時間ですら、君が愛おしくて。常に君のことを考えている。
自分がこんな人間になるなんて、思ってもみなかった。
これが愛でなければ、何だと言うのだろうか。
何よりも、誰よりも。心から、愛しているんだ。
うちの猫、かわいー!!
『ただ君だけ』
とうとうタイムマシーンが完成した。
「やりましたね、博士! まずはどこへ行きましょうか?」
助手が目を輝かせている。
まるで子供がお出かけの行き先を選ぶかのように、声が弾んでいる。
「とりあえず、100年後の未来とか見てみるか?」
特に意味もなく決めた100年後。
私達は子供が選んだピクニックでも楽しむかのように、タイムマシーンにお弁当、他には記録に必要な物など、たくさんの物を詰め込んで未来へと飛んだ。
そうして飛んだ100年後の未来は、私達が想像していた楽しいものではなかった。
灰色に染まった空。辺りには瓦礫の山ばかり。文明など到底残っていないように見えた。
「なんだこれは……」
崩壊した世界で、私達はこの惨状の原因を探った。
そして、わずかに形の残った建物の中に、風化しかけた日記を見つけた。
そこに書かれた出来事を読んで、私達は言葉を失った。
タイムマシーンを完成させたあの日。丁度、私達が未来へ飛んだすぐ後。この辺りに核が落とされたらしい。
この一発が引き金となったようだ。それは世界を巻き込む戦争へと発展していき、人類はもうほとんど残っていないということだ。
私達は、それを運良く逃げ延びたのだ。
過去や未来への希望の船だと思ったこのタイムマシーンは、私達が生き延びる為のノアの方舟だったのかもしれない。
『未来への船』
「次の目的地は『静かなる森』だ」
勇者が言った。
仲間の僧侶が説明を入れる。
「別名『沈黙の森』。そこでは魔法が一切使えなくなるという森です」
「だから、私達がついていっても足手まといになるわ」
魔法使いの言葉に、僧侶も頷く。
「安心しろって。俺達が守ってやるから。な、勇者」
戦士が「任せとけ」と胸を叩く。勇者も頷いた。
「俺達は4人でパーティーなんだ。誰も置いていかないさ。一緒に行こう」
僧侶と魔法使いは困ったように顔を合わせた。
しかし、勇者の自信に満ちた目に、微笑んで溜め息を吐いた。
「わかりました。一緒に行きましょう」
「役に立たないって文句言わないでよ?」
「泥舟に乗ったつもりでついてこい」
「泥舟じゃダメなのよ」
「よし、行くぞ!」
こうして、勇者パーティーは静かなる森へと向かった。
そして、すぐに帰ってきた。
「…………無理だ。俺達には」
みんな世界の終わりのような、絶望した表情を浮かべている。
「あんな、何一つ喋ることすらできない場所なんて無理だー!」
静かなる森――名前の如く、全ての音が掻き消されてしまう森。木々のざわめきや鳥のさえずりも聞こえない。魔法も使えないし、会話すらできない。
「めっっちゃストレス溜まる!」
「魔法はどうでもいいけど、会話すらできないとか!」
「私達には厳しいですね……」
この勇者パーティー。とても仲が良い。
暇さえあれば、いや、なくてもずっと喋っている。
そんなパーティーの最大の敵は『沈黙』。つまり、会話ができないことだった。
「どうする! 勇者!?」
「そうだな……」
目を閉じて熟考する。
そして、勇者の出した答えは――、
「諦めよう!」
「だよな!」
まぁダンジョン一つ飛ばすくらいどうってことないだろう。そんなノリで旅は続く。
彼らはまた新たな目的地を目指すのだった。
『静かなる森へ』