川柳えむ

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6/9/2024, 8:56:42 PM

 朝日の温もりを感じて、布団の中で大きく伸びをした。
 温かい光が降り注ぐ。良い天気だなぁ……。もう一眠りしたい……。

 …………明るいな?

 慌てて飛び起きた。

 今何時!? うわああぁぁぁぁ!! 家出る時間過ぎてる!? 道理で明るいと思ったんだよ!!

 急いで支度を済ませて家を飛び出る。
 だんだんと高い位置に変わっていく朝日が、焦る私を照り付けて暑かった。


『朝日の温もり』

6/9/2024, 6:52:46 AM

 ここが人生の分岐点だとして、どちらの道に行けば最善なのか、今は考えられないでいる。
 いくつにも分かれている道の真ん中で、ただ動けずにじっと蹲っている。
 ここにいたって、どうしようもないのに。もうどうしようもないって、分かっているのに。


『岐路』

6/7/2024, 10:36:44 PM

 世界の終わりに君とディナーがしたいとカッコつけたこと言ったら、じゃあ行こう! となり、近くにこんな素敵なお店があることを知った。
 言ってみて良かった。そんな余裕ないなんて言われたらどうしようかと思った。

 テラス席で美味しい料理を頬張る。幸せな気分だ。
 テーブルの真ん中に置かれた淡いランプの光に照らされた君は、一段と美しく見えた。
「良いお店ですね」
 次の料理を運んできた店主らしき男にそう告げると、彼は嬉しそうに笑った。
「このお店は私の夢が詰まっていますから。最後まで見ていたい私の夢なんです」
 なるほど。彼にとって何よりも大事なものがこのお店なんだ。
 だから、こんな状況で一人でもお店を続けている。
 そう、本当に世界が終わりそうなこの状況でも。

 ある日突然、地球を征服しに宇宙人が攻めてきた。
 徐々に侵略され滅んでいく地球。もうすぐここも終わりだろう。

 空がぱっと明るく輝いて、思わず顔を上げる。
 空からは無数の光の帯が降り注いでいる。その光景のあまりの美しさに息を呑んだ。
「綺麗だね」
 君は言った。
「そうだね」
 僕は静かに頷いた。


『世界の終わりに君と』

6/6/2024, 10:32:37 PM

 俺は史上最悪の魔王だ。
 極悪非道! 残虐な、泣く子も黙る魔王だ!

「魔王! 覚悟!」

 勇者が城に乗り込んで来た。
 馬鹿め……どうなっても知らないぞ?

 城に爆音が響き渡る。

 そうして、ボロボロになった。俺。

「なんか……弱くね?」
「かわいそうになってきた……」

 そう。俺は、魔族の奴らにとって、史上最悪の魔王だ。
 威厳なんてない。弱い。情けない魔王だ。

「き、今日はここまでにしてやろう」

 同情した勇者が帰っていく。

 史上最弱で、最高に情けない、最悪の魔王は、こうして今日も魔界の平和を守っている。


『最悪』

6/5/2024, 10:31:24 PM

 私には誰にも言えない秘密がある。
 当然誰にも言えないのだから、それは一人で墓場に持っていくくらいのもの。
 たまに吐き出してしまいたくなる。誰かに聞いてもらいたくなる。
 けれど、それすらできない。することは許されない。それだけの秘密を持ってしまったのだ。
 でもきっと、誰だってそんな秘密を持っている。だから、そんなに自分を責める必要はないのかもしれない。
 でも、この秘密抱えてしまったことは、この秘密を話すことは、きっと許されることじゃない。だから、これこそが私への罰だ。
 それでももし、私が話したくなってしまったら、貴方はこの秘密を何も言わずに聞いてくれるのだろうか。
 私の、死ぬまで抱えていく、今はまだ誰にも言えない秘密を。


『誰にも言えない秘密』

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