雨が降っている。
雲が絶えることなく大粒の涙を零し続ける。何日も何日も。
それは、まるで私の心のように。
雨に濡れながら、雲が零した涙を見ていた。
生まれて消えていく雨粒は、まるで命のようで。この一瞬の為に生きているのかと悲しくなった。
雨粒が弾ける。
弾ける瞬間、雨音は歌った。優しく軽やかに、歌った。
温かい雨は私の体を優しく包んで、涙と一緒に流れていった。
-・- ・・・ ・--・ ・-・--
私達は雨粒です。
私達が辿り着く先の地面には、一人の女の人が立っていました。
彼女は憂鬱そうに見えました。雨に濡れて、悲しそうな顔をしていました。
雨粒は生まれ消え行くだけ。そしてそれは水となり、大地を潤し、生命を豊かにする。
だけど、それが何だっていうのでしょうか。悲しむ今の彼女に何かしてあげられないでしょうか。
どうか、せめて――。
私達は歌いました。精一杯、歌いました。
彼女は泣き出しました。
-・- ・・・ ・--・ ・-・--
長い長い雨は止み、雲が千切れ、空が覗き込みました。
私達は消えたけれど、青空に七色を描いていきました。
最期に見たのは、彼女の笑顔でした。
『梅雨』
何も知らない、あどけない顔で笑う君。純真無垢で、まだ世の中の汚さを何も知らない。真っ白な君。
「本当に貴女は何度言っても駄目なんだから!」
子育てをしてそれだけでもヘトヘトな私に、アポ無し訪問の義母が、流しに置かれっ放しの、少し片付けが遅れただけの食器を見つけて、鬼の首を取ったかのように嬉々として怒鳴る。
怒鳴る余裕があるなら、片付けを手伝ってほしい。
「全く駄目な嫁でちゅよね〜」
生まれたばかりのまだ幼い我が子に擦り寄って、そんなことを吹き込む。
余裕がなくて苛ついてしまう。やめてよ。
我が子がこちらを向いた。
そして、にこーっと笑った次の瞬間。
ぶぅ、と大きな音を立てた。特大のオナラだった。
「くっさ!」
義母が苦い顔をして後退った。
キャッキャッと喜ぶ子。
純真無垢? 何も知らない?
――本当に?
でも、きっと私のことを思ってくれているのは間違いないから。
大切な大切な宝物をぎゅうっと抱き締めた。
『無垢』
「死にたい」
僕がそう言うと、そいつは「死んだところで無駄だけどね」と言った。
「死んだところで、また新しい人生が始まるだけだよ。おまえの言う『死にたい』は『消えたい』だろ」
死にたい。
そしてそのまま魂ごと消えたい。
そいつが言うには、魂はまた巡って新しい命になるという。
「輪廻転生? 信じてるの?」
「輪廻転生はあるよ」
言い切る。
まるでそれを真実だと知っているかのように。
「魂はまた生まれ変わる。旅は終わらない。死んだところでまた同じような人生が始まるだけ。死んだって、俺はおまえをまた必ず見つけ出す」
だから、今の人生から逃げても無駄だと言うのか。
死んだところで何も変わらない。どこにも逃げられない。
「そうかぁ……」
僕は泣きながら笑った。
『終わりなき旅』
全く感情の籠もっていない謝罪の言葉が車内に響き渡る。
『お急ぎのところお客様には大変ご迷惑をお掛け致します』
『電車が遅れましたことをお詫び申し上げます』
朝から遅延のアナウンス。最近はそれすらないことも増えているが。
ほぼ毎日遅延する電車。時間が守れないならダイヤにもっと余裕を持たせればいいのに。
イライラが治まらない。
「ごめん」で済んだら警察いらないって子供の頃言われなかった?
また流れる無機質なアナウンスに心の中で舌打ちをする。
揺れる満員電車。ぎゅうぎゅうに押し潰され、吐き気まで催してきた。
気持ち悪い。
きっと、最初からそういうもんだって。日本の電車も時間なんか守れないんだって。前後10分は見ておかないといけないんだって、自分で気を付ければいいんだけどね。
あーもう。
『「ごめんね」』
文章投稿アプリに表示された『半袖』というお題に、もうさすがに七分袖から半袖にする時季なのかなぁと思ったので、今日から半袖にします。
『半袖』と君が言ったから今日は半袖記念日。
『半袖』