何も知らない、あどけない顔で笑う君。純真無垢で、まだ世の中の汚さを何も知らない。真っ白な君。
「本当に貴女は何度言っても駄目なんだから!」
子育てをしてそれだけでもヘトヘトな私に、アポ無し訪問の義母が、流しに置かれっ放しの、少し片付けが遅れただけの食器を見つけて、鬼の首を取ったかのように嬉々として怒鳴る。
怒鳴る余裕があるなら、片付けを手伝ってほしい。
「全く駄目な嫁でちゅよね〜」
生まれたばかりのまだ幼い我が子に擦り寄って、そんなことを吹き込む。
余裕がなくて苛ついてしまう。やめてよ。
我が子がこちらを向いた。
そして、にこーっと笑った次の瞬間。
ぶぅ、と大きな音を立てた。特大のオナラだった。
「くっさ!」
義母が苦い顔をして後退った。
キャッキャッと喜ぶ子。
純真無垢? 何も知らない?
――本当に?
でも、きっと私のことを思ってくれているのは間違いないから。
大切な大切な宝物をぎゅうっと抱き締めた。
『無垢』
5/31/2024, 10:57:55 PM