川柳えむ

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3/24/2024, 1:19:49 AM

 いつからか、彼がいないと駄目になっていた。
 彼の為に生きている。彼から生きる活力を貰って、彼の為にお金を貯めて、彼の為にお金を使い、また彼に元気を貰ってる。
 彼と出逢う前はどうやって生きていたのかもう思い出せない。
 でも、出逢って、間違いなく彼が私の人生に彩りを与えてくれた。
 彼は特別な存在。そう、それが『推し』。
 彼の為に生きている。彼に生かされている。
 幸せなことだ。
 そうして、彼のSNSや動画やいろんな情報から、今日も生きる活力を貰っている。

 しかし、この頃は、まさか彼に認知されるなんて夢にも思っていなかった。
 認知されるようになるのはまた別のお話。


『特別な存在』

3/22/2024, 11:03:45 AM

 期待しちゃって、バカみたい。
 期待しなければ裏切られることもないのに。
 それなのに、期待して。
 そもそも、最初はそんなつもりじゃなかった。
 なのにどうしてだろう。いつからかこうやって期待してしまうようになってしまったのは。
 だって、優しかった。嬉しかった。
 思ってたより、ずっと。
 だから、つい期待してしまう。もっと、もっとって。

 もっと『もっと読みたい』押されないかなって。


『バカみたい』

3/21/2024, 10:48:55 PM

 僕はふらふらりと宇宙を漂っている。
 そう、僕は惑星。
 この宇宙にはいろんな星がたくさんたくさん散らばっている。
 その中でも僕は珍しいんじゃないだろうか。
 僕らの名前は『JuMBO 24』。
 僕と弟、二人(二星)あわせてそんな名前をしている。
 僕らは他のみんなとは少し違うところがある。
 それは、僕らは誰かの周りを回ったりなんかしない。地球という星は太陽という恒星の周りを回っていると聞いたことがある。つまり、僕らはそういうものではない。誰かに縛られて生きていない。
 自由で、孤独に、宇宙を漂う『自由浮遊惑星』だ。恒星からはぐれてしまった、別名『はぐれ惑星』とも呼ばれている。
 誰かに縛られないのは気楽だ。好き勝手できるし。
 でも宇宙は、暗くて、広くて、たまに寂しくなる。
 そんな時に思い出す。僕と一緒にいる弟のことを。
 他の浮遊惑星ならそうはいかない。あいつらは大体みんな一人ぼっち。二人ぼっちの僕らは特別なんだ。
 もしも、この宇宙の遠く遠くに広がっている全ての星々が消えてしまったって、僕には弟がいる。
 僕らだけの特別。


『二人ぼっち』

3/20/2024, 10:53:54 PM

 小さい頃から兄と比べられてきた。
 天才肌で何でも卒無くこなす兄に比べ、努力してようやく一人前だ。コミュニケーション能力だって持ち合わせている兄、僕も頑張っているが上手く出来ている自信はない。
 僕の一番好きな時間は夜だった。夜というより、夢の中にいる時間が好きだ。
 いつからだったか、夢の中を自由に動けるようになっていた。明晰夢と言うやつだ。元々夢を見るのが好きだったが、それからより楽しくなった。
 夢の中でなら、好き勝手できる。僕も優秀でいられる。兄と同じくらい、いや、超えるくらいに上手くいっている。
 今日も寝る前に薬を飲んだ。早く眠りに就きたいし、なるべく長く眠っていたいから。
 夢の中に好きな人が出てきた。現実の彼女は、兄の恋人だった。
 夢の中では、兄と彼女は付き合っていなかった。むしろ僕と仲が良い。
 気付けば彼女と良い雰囲気になっていて、僕は今だと告白しようとした。
 なのに、そこで目が醒めた。いや、起こされた。よりにもよって、兄が起こしに来た。邪魔をされた。
 あれが夢だと理解っている。だからこそ、せめて夢の中だけでも良い思いをさせてくれたっていいじゃないか。
 僕を起こすと、兄は部屋を出て行った。
 その背中を見送り、再び眠りに就こうとしたが、今度はなかなか眠れない。すっかり目が冴えてしまった。
 なぜ夢の邪魔をするんだ。許せない。現実が、何もかもを邪魔をしてくる。
 薬をたくさん飲んだ。深く眠れるように。
 今度こそは夢が醒める前に伝えたい。夢が醒める前に兄を殺してやりたい。夢が醒める前に、いや、夢の中で、優秀な僕と僕のことが好きな君とずっと一緒にいたい。
 どうか、このまま夢から醒めませんように。


『夢が醒める前に』

3/20/2024, 8:17:28 AM

 たまたまだ。それはたまたま、偶然だっただけで、決して、故意に覗き見しようとしたとかそんなわけではない。断じてない。
 帰ろうと教室を出て玄関まで行ったはいいものの、スマホを机に置いてきたことに気付いて、慌てて戻ってきた。そしたらどうだ。幼馴染の男子が、放課後の教室で、女子に告白されていた。
 え、えぇぇぇぇ!?
 あいつ、告白とかされるの!? でも、そういえばクラスの女子に、あいつが意外とモテている話を聞いたことがある。
 怖い顔をしているが、困っていればすぐ声を掛けたり、誰かと一緒の仕事だとさり気なく大変な方を担当してくれたり、結構、いや、かなり気は利くし、そりゃまぁモテてもおかしくないのかもしれない。
 昔はその顔のせいでよく怯えられていたから、ようやくあいつの良さをわかってくれる人が現れてくれたか。と、嬉しい気持ちになった。私はずっと昔から知ってたけど。
 そう。私はずっと昔から知っていた。私だけが、ずっと。
 扉の裏に隠れて、二人の様子を窺う。
 たまたま教室に戻ってきたらこんな状況になってたから、わざとじゃない。スマホを取りたいだけだ。でも、今取りに行くのは違う気がするから、こうやって陰にいるだけだ。
 あいつは、なんて返すんだろうか。
 なぜかこちらまで心臓が大きく鳴り出した。なんでこんなにうるさいんだろう。聞かれてしまったらどうしよう。
 私がドキドキするところじゃない。もし二人が付き合い出したなら、幸せなことじゃないか。ガサツで取り柄もない私なんかよりずっとお似合いだし。そう、胸が鳴ってるのはきっと、この素敵な瞬間に居合わせてしまったからだ。あいつの良さをわかってくれる人が現れたからだ。そういうことに胸が高鳴っているんだ。きっとそうだ。
「…………ごめん」
 あいつが謝る声が聞こえた。
 え、フるの!?
 今まで女の子に怖がられてたくせに、あんなにかわいい子を!? なんで!?
「好きな奴がいるんだ」
 ……え。なにそれ、初耳なんだけど……。
 胸がズキンと痛んだ。何、これ。
「好きな子って誰か聞いていい?」
 女の子が尋ねる。
 勇気あるな。私なんて、なぜだか聞くのが怖いって思ってしまっているのに。
「……ずっと昔から一緒にいる奴。一番俺のことをわかってくれてるのに、俺の気持ちには全然気付いてくれない奴」
 思わず走り出していた。
 昔からあいつの傍にはずっと私だけがいた。何かあるたび、「おまえのことを一番わかってるのは私だからね!」「そうだな」なんて笑い合っていた。だから、それはつまり――。
 顔が熱い。胸が苦しい。
 心臓が飛び跳ねている。そのまま高くまで飛んでいってしまうんじゃないのかというくらいに。
 でも、さっきと違う胸の高鳴りが、なんだか心地良い。
 この心地良さに、気付いてしまったんだ。自分自身の気持ちに。


『胸が高鳴る』

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