川柳えむ

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12/27/2023, 5:04:20 AM

 変わらないものはない。

 ――というお題を元に物語を執筆していた。
 なかなか良さそうな物語が書けた。ちゃんとした物語だ。

 操作をミスした。
 一瞬で書いたものが消えた。
 これだからスマホは嫌いなんだ。パソコンならCtrl+Zで一つ手前の作業に戻せるのに。
 泣きたい。

 変わってしまった。物語が、一瞬で、白紙に。

 変わらないものはない。
 わかっているけど。そうじゃない。
 こういうのは、時間が経ち、街並みが変わってしまったとか、人が変わってしまったとか、そういった物語の為にあるもので。
 物語を白紙に変える為のものではなくて。
 今、その実体験は、いらない……。


『変わらないものはない』

12/25/2023, 8:54:50 PM

 今時誰もやっていないだろう個人サイトをクリスマス仕様にして。
 とりあえずせっかくのクリスマスだからと、お酒とチキン、ケーキを飲み食いして。
 なんとなくクリスマスソングを流してみて。
 見たい特別番組を見て。
 サンタクロースを追跡して。
 急に街が見たくなって、でもわざわざ人混みを出歩くのも大変だしと、窓を開けて冬の空気を感じて。
 近所の家のイルミネーションが視界に入って。
 みんながいろいろなクリスマスを過ごしているんだろうなぁ、と思いを馳せる。そんな少しだけ特別な日。


『クリスマスの過ごし方』

12/24/2023, 12:00:04 PM

「クリスマスだー!」
 いつもの面子で集まるクリスマスイブ。ここ数年、毎年恒例になっているイベントだ。
 七面鳥にシャンメリー、もちろんケーキも用意してある。
 高々とグラスを掲げる。「かんぱーい!」と弾んだ声、グラスのぶつかり合う音が部屋に響く。
 部屋にクリスマスソングが流れる。それに合わせて歌い出す人がいる。
 料理をつまみながら、一方ではゲームをやっている人もいる。
 それなりの人数が集まっているから、各々好きなことを自由にやっている。それが許される空間なのだ。
 大好きな人達と、こうやって集まって騒げることが幸せだと、みんな感じていた。
 今年も楽しいイブの夜が更けていく。


『イブの夜』

12/24/2023, 3:20:45 AM

 この日の為に、君の好きなことをいっぱいリサーチしたんだ。
 君の好きな食べ物、好きな本、好きな歌、好きなアイドル、好きな服、好きなアクセサリー、好きなブランド……。
 いろんなものをたくさん調べて、そして、最高のプレゼントを用意した。

 そして迎えたクリスマスイブ。
 キラキラと輝くイルミネーション。街に流れるクリスマスソング。
 たった一人立ち尽くす僕。誘ったはずの君。
 手からは一生懸命用意したプレゼントが所在無げに揺れている。
 今日は仕事なかったよね? 連絡がつかないのは、何か他のことが忙しいのかな?
 一応既読はついてるから、事故に遭ったとかじゃないよね。それは安心だ。
 ……………………うん、忙しいんだ、よ、ね。
 北風が心に沁みた。


『プレゼント』

12/22/2023, 10:39:21 PM

 柚子はあまり好きじゃないのに、帰ってきたところに彼がゆずはちみつ茶を出してくれた。
「……柚子、あまり得意じゃないんだけど」
 特にこれといった理由があるわけではい。ただ、なんとなく苦手。
 テーブルに乗ったお茶からは、湯気と、柑橘の独特な香りが漂ってくる。
「そうなの? まぁとりあえず飲んでみてよ」
 それなりの時間一緒にいると思っていたのに、お互いにまだ知らないことは意外と多い。これもその一つ。
 知らないからって責めるつもりはない。知らないことがあるのは当たり前だから。
 でも、疲れていたから、ちょっとだけ文句を言いたくなってしまった。
「だから、得意じゃないんだってば。いらない」
 それでもそんな私を怒ることはなく、彼は少し困ったように笑った。
「まぁまぁ騙されたと思って飲んでみてよ」
「騙されたくないんだけど」
 そう言いながら、渋々とお茶を口にする。
「……美味しい」
「でしょ? 俺特製ゆずはちみつ茶! 結構飲みやすいでしょ。……最近疲れた顔してたから。疲労回復にいいんだよ、これ」
 私は、飲む前から嫌だって文句ばっかり言ってしまったのに。
 彼は嬉しそうに笑ってくれた。私の様子に気付いてくれて、私を思ってくれて、こんなものを作ってくれた。
 立ち上がって、彼が自分の分のゆずはちみつ茶を持ってきたところを、ぎゅっと抱き締めた。
「ごめんね。ありがとう」
 柚子の優しい香りが、辺りに広がっていた。


『ゆずの香り』

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