お題『既読がつかないメッセージ』
(一次創作)
初めてできた彼女と、初めて喧嘩した。
デートの最中にむくれ顔のまま俺を残してズンズン歩いていく後ろ姿。その背中に余計に腹が立ち、俺もまた逆方向へと歩いた。
その夜。
カッカしていた頭が冷めてしまうと俺の方も悪かったな、という思いが湧き起こる。
だけど素直になりきれない俺は謝罪なんてできるわけがなく、でも取りつく島欲しさにLINEを送った。
《こんばんは。元気?》
考えに考え抜いた言葉は何ともいえない、頭の悪さを露呈していた。
しかし、いつまで経っても既読がつかない。いつもならすぐに反応があるのに……。
俺は慌てた。彼女の身に何かあったのかもしれない。
堪らず通話のボタンを押す。3回もかけたのに、こちらも反応がない。
どうしよう、俺、捨てられたのか?
茫然としていると、呼び出し音が鳴る。
「もしもし?」
早口になる俺の声に対して、彼女はとてもゴキゲンな口調。
『もしもし。なんかあったの? あ、ちなみにこっちは今日のデート資金でイッチバン高いお肉食べてた。うふふ、美味しかったぁ〜』
彼女が無事でいたことよりも、俺だって肉が食べたかった悔しさで泣けてきた。
お題『秋色』
(あくねこ二次創作)
「主様、午後のお茶の時間でございます」
この優しくまるい響きは、確か……フェネスさん、と言ったか。
「お茶の時間ですか、フェネスさん……」
俺がこの屋敷に来てからもう一週間が経った。だけど俺の尻は未だにむず痒い。それはそうだろう、全員イケメンなんだから。むしろ俺の方が小間使いに相応しい。
だからついつい執事のみんなさんにさん付けもするし、デスマスで話してしまう。その度に執事は恐縮するし、フェネスさんに至ってはなぜかひとり反省会をしているらしい(ラトさん・談)。
そして、今日の担当執事はフェネスさんのようだ。この柔らかい笑顔をなるべく壊したくないなぁ……。
「主様、また……。俺のことは呼び捨てにしてください。あ、そうだった。それよりも見てください、このお菓子!」
あ、今、はぐらかしたな?
けれど見せられたお菓子はどれも美味しそうで、思わず頬が綻んでしまう。
「焼きたてアツアツのスイートポテトに、ロノ特製モンブランに、かぼちゃのほろほろクッキーです。紅茶はディンブラを合わせてみました」
秋めいたそのお菓子だけれど、ひとりで食べるのも味気ない。よし。
「フェネスさん、俺と一緒にお茶してくれませんか?」
わ、わわわ! なんだよ俺!? これじゃナンパじゃねーか!!
内心バクバクな俺の誘いをフェネスは、
「主様と同じテーブルにつくわけにはいきません」
と固辞する。
「やっぱりダメですか……でもせめて座ってはいただけませんか? 立ちっぱなしで様子を窺われると落ち着きません……」
「はぁ……それでは……」
やっと目線の高さが同じになった。というか、座高低いな! ということは、脚かなりなっが!!
しかし、この状態で気づいたこともある。
「フェネスさんって、秋の夕陽が沈むような瞳をしていて、とても素敵だと思います」
だーかーらー! これじゃ口説いてるみたいだってば!!
そんな俺の心を知ってか知らずか、長いまつ毛を伏せたかと思うとふわりと微笑み、小さな声で恥ずかしそうに、
「ありがとうございます、主様」
なぁんて言うから、俺は絶対このでっかい小動物(?)を守ろうと誓うのだった……。
お題『もしも世界が終わるなら』
俺は職場の同僚と一緒に、休憩室で昼飯を食いながらテレビを眺めていた。
「もしも近い未来に世界が終わるとしたら……俺なら、アイスを食べに行くかも」
同僚の思いもよらない言葉に目を瞬いた。
「なんで、アイスなん?」
「んー、だって俺、糖尿だから」
「はあ!?」
俺は毎日顔を合わせるこの同僚のことを何も知らないのかもしれない。
「あと、ケーキにおはぎに……あの泉みたいに湧き出るチョコレートの」
「チョコファウンテン」
「そうそれ」
しかし、奴のうっとりとした表情は一転して暗くなった。
「どうした?」
「だってさぁ」
次に口から出てきたことは、実に現実的な言葉だった。
「世界の終わりを前にしたら、アイスクリーム屋もケーキ屋も和菓子屋も、みんなみんな仕事なんてするわけないだろぉ!!」
「あー、至極もっとも」
「だからさ、あのチョコマウンテン買っとく。買っといて、世界の終わりに俺はそれを楽しむ」
「チョコファウンテン、な」
それにしても、と思う。
「あの隕石、地球に来なきゃいいけどなー」
テレビでは『巨大な隕石が地球に接近中!』というテロップが踊っていた。
「そうだよなぁ」
お題『靴紐』
(一次創作)
俺の靴は優秀だ。特に今履いているスニーカーはピカイチで、一度も紐が解けたことがない。そのおかげだろうか、悪いことが一度も起こったことがない。
むしろ、いいことづくめだ。今の彼女に出会ったのも、今の仕事に就けたのも、仕事の合間に書いた小説が新人賞を取れたのも——
なので、俺はこの靴を大事に大事に履いているつもりだった。
しかし、別れとは突然訪れるもので。ある日何の前触れもなく靴紐が切れた。
彼女が二股をかけていて、しかも本命はあっちだった。会社は倒産したし、小説には盗作疑惑が持ち上がった。
まったくもって散々だ!俺はもうスニーカーなんて信じないぞ!!
お題『ひとりきり』
(一次創作)
森の奥にひっそりと住んでいる。
街の人たちが俺のことを世捨て人とか化け物と呼んでいるのを聞いたことがあった。
少なからず傷ついた。
俺は、もっと森の奥深くに逃げ込んだ。
だけど自給自足の生活は大変で、月に一度くらいは街に行かなくては立ち行かない。
森で採った木の実や、肉を得るために捕まえた動物の革を売ったりして野菜や果物、石鹸などの衛生用品など。
……それと、本。
そうしてまた森の奥に引き篭もる。
俺は今日もひとりきり。
ひとりきり、本の世界に飛び込んだ。