お題『もしも世界が終わるなら』
俺は職場の同僚と一緒に、休憩室で昼飯を食いながらテレビを眺めていた。
「もしも近い未来に世界が終わるとしたら……俺なら、アイスを食べに行くかも」
同僚の思いもよらない言葉に目を瞬いた。
「なんで、アイスなん?」
「んー、だって俺、糖尿だから」
「はあ!?」
俺は毎日顔を合わせるこの同僚のことを何も知らないのかもしれない。
「あと、ケーキにおはぎに……あの泉みたいに湧き出るチョコレートの」
「チョコファウンテン」
「そうそれ」
しかし、奴のうっとりとした表情は一転して暗くなった。
「どうした?」
「だってさぁ」
次に口から出てきたことは、実に現実的な言葉だった。
「世界の終わりを前にしたら、アイスクリーム屋もケーキ屋も和菓子屋も、みんなみんな仕事なんてするわけないだろぉ!!」
「あー、至極もっとも」
「だからさ、あのチョコマウンテン買っとく。買っといて、世界の終わりに俺はそれを楽しむ」
「チョコファウンテン、な」
それにしても、と思う。
「あの隕石、地球に来なきゃいいけどなー」
テレビでは『巨大な隕石が地球に接近中!』というテロップが踊っていた。
「そうだよなぁ」
9/18/2025, 11:42:01 AM