にえ

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お題『秋色』
(あくねこ二次創作)


「主様、午後のお茶の時間でございます」

 この優しくまるい響きは、確か……フェネスさん、と言ったか。

「お茶の時間ですか、フェネスさん……」

 俺がこの屋敷に来てからもう一週間が経った。だけど俺の尻は未だにむず痒い。それはそうだろう、全員イケメンなんだから。むしろ俺の方が小間使いに相応しい。
 だからついつい執事のみんなさんにさん付けもするし、デスマスで話してしまう。その度に執事は恐縮するし、フェネスさんに至ってはなぜかひとり反省会をしているらしい(ラトさん・談)。

 そして、今日の担当執事はフェネスさんのようだ。この柔らかい笑顔をなるべく壊したくないなぁ……。

「主様、また……。俺のことは呼び捨てにしてください。あ、そうだった。それよりも見てください、このお菓子!」

 あ、今、はぐらかしたな?
 けれど見せられたお菓子はどれも美味しそうで、思わず頬が綻んでしまう。

「焼きたてアツアツのスイートポテトに、ロノ特製モンブランに、かぼちゃのほろほろクッキーです。紅茶はディンブラを合わせてみました」

 秋めいたそのお菓子だけれど、ひとりで食べるのも味気ない。よし。

「フェネスさん、俺と一緒にお茶してくれませんか?」

 わ、わわわ! なんだよ俺!? これじゃナンパじゃねーか!!
 内心バクバクな俺の誘いをフェネスは、

「主様と同じテーブルにつくわけにはいきません」

と固辞する。

「やっぱりダメですか……でもせめて座ってはいただけませんか? 立ちっぱなしで様子を窺われると落ち着きません……」

「はぁ……それでは……」

 やっと目線の高さが同じになった。というか、座高低いな! ということは、脚かなりなっが!!
 しかし、この状態で気づいたこともある。

「フェネスさんって、秋の夕陽が沈むような瞳をしていて、とても素敵だと思います」

 だーかーらー! これじゃ口説いてるみたいだってば!!
 そんな俺の心を知ってか知らずか、長いまつ毛を伏せたかと思うとふわりと微笑み、小さな声で恥ずかしそうに、

「ありがとうございます、主様」

なぁんて言うから、俺は絶対このでっかい小動物(?)を守ろうと誓うのだった……。

9/19/2025, 12:57:58 PM