お題『鐘の音』
※リアルイベント直前につき保留
お題『つまらないことでも』
主様は多趣味な方だ。ミヤジさんやラトに習ってピアノ・バイオリン・チェロも一通り演奏できるようになり、今でもレッスンは欠かさない。
趣味の菜園作業はうだるような日中の暑さを避けて、早朝に様子を見に行くことが多い。畑仕事を終えると俺が用意した水風呂をひとしきり堪能すると、毎日のようにミヤジさんたちと室内楽のレッスンをしている。
……と言っても、貴族の前で歌や踊り、楽器演奏をする俺たち執事とは違い、主様はステージに立つことはないのだけれど。それでも熱心に練習するのは何故なのか。いつだったか、それをお聞きしたことがある。
「最初は演奏なんて興味はなかったの。でも、どんなにつまらないことでもひと通りやってみた方がいいって、その頃読んだ絵本に書いてあったのね。だから私もとりあえずミヤジに教えてって頼んだの。
その時、ミヤジがバイオリンで自己紹介をしてくれて。後で、これも本で知ったんだけど、何でもバイオリンの音は人間の声が出る仕組みと同じなんだって。それから私も『こんにちは、私は✳︎✳︎✳︎です』ってやってみたくなったの。気がついたら意地になっていろんな曲を練習するようになったけどね」
主様の音楽熱にそんな裏話があったとは思いもよらなかった。
主様が初めて楽器を触ったのは4歳だった。あれから8年が経とうとしている。
屋敷には今日も演奏が響いていて、そっと聴いているのは多分俺だけではないだろう。
お題『目が覚めるまでに』
夏の主様の朝は、早い。
育てている植物の観察のためだ。この夏は主様専用の畑に枝豆を植えていて、事細かに成長記録をつけていらっしゃる。
主様が目を覚まされる前に、俺は一杯の紅茶とお茶菓子の支度をする。今朝はニルギリのアイスティーと、昨日主様と街で買ってきたフィナンシェにしよう。
ふふ、楽しみだなぁ。
最近主様は気難しいお年頃になってきて、執事たちとあまり交流を取りたがらなくなった。けれど寝起きはとても素直に甘えてくださる。それは俺だけが知っている主様の貴重な一面だ。
さぁ、そろそろ起こしに行こうか。
お題『明日、もし晴れたら』
※保留
お題『だから、一人でいたい。』
主様を怒らせてしまった。
昨日までお風呂のお手伝いをしていて、そのつもりで今夜も……と思っていたのが大間違いだったのだ。
「フェネスの馬鹿! 私だってそろそろひとりで入れるもん!!」
俺にはデリカシーというか配慮というか、女性の心の機微を察知する能力が欠如しているのかもしれない。
反省点は日記に書いて二度としないようにしないと。
『もしかしたらこれを機に担当を代えられるかもしれない。そしてもう二度と担当に戻してもらえないかもしれない……』
そう記していたら眼鏡の視界が歪んできた。
「はぁ……俺ってなんてダメな奴なんだ……」
ペンを置き、頭を抱えていると書庫に誰かがやって来た気配がした。
「フェネスさん」
衣装係のフルーレだった。
「あの、相談というか……主様のお召し物のことなんですけど」
フルーレが俺に服の話をしてくるなんて珍しい。しかし頼られている気がして、少しだけ気持ちが上向いた。
「主様のお召し物がどうしたの? フルーレ」
「最近胸周りがキツそうなので新しい服を作るために採寸を……と思ってさっきお部屋に伺ったら、馬鹿と言われて締め出されて……俺、何か間違ってたんでしょうか?」
なんだ、フルーレもだったのか。
「俺もだったんだ」
「えっ、フェネスさんも?」
ふたりで頭を悩ませていたけれど、ふとある言葉を思い出した。
「思春期……かもしれない」
「あぁ……なるほど、そうかもしれませんね……」
主様に思春期が訪れたのであれば納得がいく。しかし、そうとなればどう接したものか?
「分からないので主様に直接窺いましょう」
「え! フルーレ!?」
鼻息も荒く意気揚々と主様の部屋に向かおうとするフルーレの後を慌てて追いかけた。
そして。
「だから、ひとりでいたいって言ってるでしょ!? フルーレとフェネスの馬鹿ぁ!!」
分かってはいたけれど、ショックもそれなりだ。
主様の思春期……これは、手こずりそうだなぁ……。