お題『澄んだ瞳』
※保留
お題『嵐が来ようとも』
※後ほど
お題『お祭り』
※後日更新予定
お題『誰かのためになるならば』
主様のためになるなら、何でもしたいと思っている。誰かと争うことは好きじゃないけど、それが主様のためなら俺は戦おう。
俺が誰かのためにそう思うのは、もしかしたら初めてのことかもしれない。みんなの手伝いをするのは、自分のためにやっていることだ。承認欲求を満たすために感謝されるようなことをしてきた。
本当の俺はとても身勝手で感情的な、どうしようもない奴なんだ。
そのどうしようもない俺を救ってくださったのは前の主様と今の主様だと思っている。
「主様、ありがとうございます」
水分補給用のハーブ水をグラスに注ぎながら、つい唐突な感謝の言葉が口から溢れてしまった。
「なぁに、フェネス」
「いえ、何でも! 主様のお顔を見ていたら、つい言いたくなってしまって……」
驚いた顔をしていた主様は、ふふ、と笑っている。
「変なの、フェネス。私の方が言わなきゃいけないのに。お水、ありがとう」
ああ、この笑顔のためなら、俺は何だってしよう——そう決意を新たにした。
お題『鳥かご』
主様が動物と暮らしてみたいとおっしゃた。
「バスティンが世話をしている馬がいるではありませんか」
しかし主様はいい顔をしない。
「幸せのしょうちょうって言われている青い鳥をかいたいの。ダメかなぁ……」
俺は主様の親代わりである前に、主様の執事だ。主様の望みにはなるべくお応えしたい。
しかし一方で、青い鳥を捕まえていいものかと悩んだ。時折やってきては執事たちの指先で寛ぐから捕まえるのは多分簡単だろう。でも……俺が青い鳥だとして、狭い鳥かごに収監されるのはゾッとするな……何とかそれっぽい言い訳……うーん……。
「主様、おそらく青い鳥が幸せを運んできてくれるのは、自由に空を飛べるからではないでしょうか? どこからともなくやってきては他所から持ってきた幸せを置いていくのかな、と、俺は思います」
主様は少し考えてから、それもそうかも、と頷いた。
「もし私が狭い檻に入れられたらやっぱり嫌だもの。変なことを言い出してごめんなさい」
反省の言葉を聞いて俺は卑怯にも安心した。 俺が青い鳥を主様に飼ってほしくなかったのは、実はそうなれば多分主様の関心は青い鳥に向かって、俺のことなんかどうでもよくなるかもしれないという思いも少なからずあった。
しかし主様は思いがけないことを口にする。
「フェネスも狭いところが苦手だもんね。青い鳥の気持ちによりそえるなんて、すてきだと思った」
ああ、主様には全てお見通しだったのか。まだ幼いと思っていたけれど、主様は着実に成長されている。
それが嬉しくもあり、少し寂しくもある。だって主様もいつの日か俺を残して……でも、だからこそ俺は主様の青い鳥になろう。せっせと幸せを運んで、充実した一生を過ごしてもらわないとね。